「僕の2人目のママ!」親友の息子から嬉しいひと言
親友が亡くなってから、親友の遺言を守りたいと必死で家のことや子どもの世話を手伝うようになりました。最初のころ、その子はほとんど笑いませんでした。小さな体で必死に悲しみをこらえているのが伝わってきて、胸が苦しくなりました。
それでも私は、できることを続けました。好きなごはんを作り、一緒に絵本を読み、話を聞いたり、一緒にいる時間を増やしていきました。すると少しずつ、笑うようになっていったのです。そんなある日―― 「見て! 今日、幼稚園でママの絵を描いたの!」と言いながら、1枚の紙を差し出してきました。そこに描かれていたのは、私の顔でした。驚いていると、その子は当たり前のように「お空のママの絵もあるよ! これは僕の2人目のママ!」と笑顔で言うのです。私はうれしいはずなのに、簡単に受け止めてはいけない気もして、何も言えませんでした。――そのとき「あんた、また来てたの?」と声が聞こえました。玄関に立っていたのは、親友の妹でした。最近、この家に頻繁に出入りするようになり、私を見るたびに露骨に嫌な顔をするのです。さらにその子が私の後ろから顔を出し、「ママぁ」と言った瞬間 「は!? ママ!? 何言ってるの! この人がママなわけないでしょ!」と鋭い声に、その子はびくっとして私の服をつかみました。
それでも親友の妹は「ていうか、私の方がいいでしょ? ほら! お姉ちゃんと顔も似ているし! いいでしょ? 彼、イケメンだし真面目だし……私、彼がほしいの♡」と言い放ったのです。その言葉に、背筋がぞっとしました。親友のことも、この子の気持ちも、何ひとつ考えていないのが分かったからです。
妹が崩れた瞬間
数日後の夕方、私は親友の家で夕食の支度をしていました。親友の夫は早めに帰宅していて、リビングでは親友の子と過ごしていました。そんな穏やかな時間を壊すように、突然インターホンが鳴ったのです。玄関を開けると、そこにいたのは親友の妹でした。
しかも私の顔を見るなり「あんた、最低ね!」と怒鳴り、そのまま中へ入ってきたのです。 そしてスマホを突きつけてきたのです。画面に映っていたのは、私の顔写真を雑につなぎ合わせた合成画像……。知らない男性と親しげにしているように見せかけたものでした。すると親友の妹はニヤリと笑い「この女、男がいるのよ! こんな人をこの家に出入りさせるなんてありえないでしょ! この子が混乱しちゃうじゃない!」と言い放ったのです。
私が「違うよ、私じゃない――」 そう言いかけたとき、親友の夫がスマホの画面を見たまま「……これ、君じゃないよね」と呟いたのです。親友の妹が「は? 何言ってるの? 顔、そっくりじゃない!」と続けました。しかし、彼は目を離さず「確かに似てる。この日の日時見せて? 」と言い画像の確認をしていました。すると親友の夫は「この日のこの時間、彼女はここにいたよ」と告げるのでした。その一言で、親友の妹は一瞬言葉を失い、次の瞬間、取り繕うように「だ、だから何よ! 細かいことなんてどうでもいいでしょ! この人を追い出せればよかったのよ!」 と自爆! そして「だってイケメンの旦那がほしかったの!お姉ちゃんが死んだんだからいいでしょ!」と叫ぶのでした。
その場が、しんと静まり返りました。親友の死さえ、この人にとっては“チャンス”でしかなかった。その事実に、私は言葉を失いました。 その後、妹は本音が明らかとなり、家を追い出されることになりました。
もう一つのお願い
数日後、いつもの穏やかな時間を取り戻したとき、親友の夫がぽつりと言いました。
「あの……息子の新しいママになってくれない?」
突然の言葉に、私は首を振り「ダメだよ……親友に申し訳ない」と呟きました。そのとき、親友の夫が一通の手紙を差し出しました。震える手で封を開くと、そこには親友の想いが綴られていました。
――この子をお願い ――
――もし2人が望むなら、夫婦になってほしい ――
親友が最後に願ったのは、私と家族の幸せでした。 私は親友の思いを受け取ることにしました。その後、私たちは少しずつ家族になりました。すぐにすべてが変わったわけではありません。それでも、私たちは支え合いながら親友の思いを胸に前に進んでいます。
◇ ◇ ◇
大切な人を失っても、その人が残してくれた気持ちは消えません。だからこそ、その想いを受け取った私たちが前を向いて生きていくことが、何よりの答えなのかもしれません。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。