出張中に届いた不穏な電話
出張最終日。地方の基幹病院との長期契約を無事に結び、ホッと一息ついていた僕のスマホに、同僚の一人から着信が入りました。
電話に出るなり、聞こえてきたのは3人の下品な笑い声でした。
「お疲れ〜。突然で悪いけど、お前の席もうオフィスに無いから(笑)」
リーダー格の同僚が、勝ち誇ったように続けます。
「今、会社で全社を挙げた『新プロジェクト』が立ち上がってさ。お前は外されてたわ。お前のデスク、邪魔だったから中身ごと倉庫に放り込んでおいたわ。戻ってきても席はないからw メンバーに選ばれなくて残念だったな」
他の2人も「ご愁傷さまw」「一人だけメンバーから外されててウケるw」と、電話口で大はしゃぎ。僕が不在の隙に、物理的に居場所を奪って追い出そうという、あまりに幼稚な嫌がらせでした。
「知ってるよ?」僕の意外な返答
あまりに短絡的な彼らの行動に、僕は怒りを通り越して、少しだけ同情してしまいました。彼らは、本社の「本当の決定」を何も知らなかったのです。
「……あぁ、そのこと? 知ってるよ」
僕が冷静に返すと、電話の向こうが「え?」「なんでそんなに落ち着いてんだよ?」とざわつき始めました。
僕は、隣で今回の出張報告をまとめている、本社直属の秘書の方に軽く会釈をしました。
「実は今回の出張、ただの営業じゃないんだ。僕、週明けから新設される『エリア統括支社・支社長』として、駅前にある新しいビルに移ることになってるんだよ。だから、今回のプロジェクトに名前がないのは当たり前だよね」
そう、僕はこれまでの地道な営業実績と、現場との信頼関係を築く手腕が上層部に高く評価され、30代という異例の若さで支社長への就任が決まっていたのです。同僚たちが「新プロジェクト」と呼んで浮かれていたのは、実は僕が統括する新支社の配下で行われる、単なる一施策に過ぎませんでした。
逆転した立場と、彼らの末路
週明け。僕は広々とした支社長室で、ピカピカの「支社長」のプレートが置かれたデスクに座っていました。そこへ、顔面蒼白になった同僚3人が呼び出されてやってきました。
新しい支社長が、バカにしていた「僕」だと知った瞬間、彼らはその場に凍りつきました。
「あの、あの電話は……その、お祝いのサプライズというか、ジョークで……」
冷や汗を流しながら苦しい言い訳をする彼らに、僕は事務的に告げました。
「君たちが僕の荷物をまとめておいてくれたおかげで、スムーズに新オフィスへ引っ越しができたよ。手間が省けて助かった。ただ、他人のデスクを勝手に荒らし、私物を不当に扱うのは重大なコンプライアンス違反だよね。その件については、すでに人事部へ報告してあるから」
彼らは言葉を失い、フラフラになりながら部屋を出ていきました。その後、彼らには厳重注意が下され、今は僕の目が届く部署で、肩身の狭い思いをしながら働いています。
人の席を奪おうと画策した彼らが、自分たちのキャリアという「席」を失いかける。まさに自業自得な結末となりました。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。