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新生児メレナ、新生児・乳児ビタミンK欠乏性出血症ってどんな病気?

この記事では新生児メレナ、新生児・乳児ビタミンK欠乏性出血症について、医師監修のもと解説します。ビタミンK2シロップの予防で、赤ちゃんの消化管出血や脳出血を防ぐことができます。心配なことや不安なことがあれば、出産した施設あるいは小児科へ相談しましょう。

この記事の監修者
監修者プロファイル

医師松井 潔 先生
小児科 | 神奈川県立こども医療センター 産婦人科

愛媛大学医学部卒業。神奈川県立こども医療センタージュニアレジデント、国立精神・神経センター小児神経科レジデント、神奈川県立こども医療センター周産期医療部・新生児科等、同総合診療科部長を経て現在、同産婦人科にて非常勤。小児科専門医、小児神経専門医、新生児専門医。
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新生児のイメージ

 

今回は、新生児メレナ、新生児・乳児ビタミンK欠乏性出血症の解説と、赤ちゃんに不足しやすいビタミンKを補う方法や新生児期の出血症予防についてお話しします。

 

新生児期に不足しやすいビタミンK

ビタミンKは、出血を止める蛋白質(凝固因子)を作るのに必要なものです。このため、ビタミンKが不足すると、出血が止まりにくくなります。

通常は、腸の中の細菌が作ったビタミンKを利用して出血を止めるのに役立てますが、母親のおなかの中にいる間、胎児の腸には細菌がなくてビタミンKを作り出すことができないので、胎盤を通して母親から受け取ります。しかしながら、ビタミンKは胎盤を通りにくいため、生まれたばかりの赤ちゃんの体内に十分な量が蓄えられていません。生まれてすぐ腸内に十分な量の細菌が増えるわけではないため、ビタミンKを補わないと不足します。赤ちゃんはビタミンKが不足すると、消化管出血や脳出血を起こすことがあります。

日本国内の産科施設では、赤ちゃんにビタミンK2シロップを予防的に投与して、出血を予防します。

 

新生児メレナ、新生児・乳児ビタミンK欠乏性出血症とは?

ビタミンKが不足して起こる病気をビタミンK欠乏性出血症と呼びます。赤ちゃんに起こるビタミンK欠乏症は発症する時期によって、新生児ビタミンK欠乏性出血症と乳児ビタミンK欠乏性出血症に区別します。

新生児ビタミンK欠乏性出血症は、生まれてから生後7日目までに起こります。生後2~4日目に起こりやすく、血を吐いたり、便に血が混じったりします。しかしながら、生まれて間もないこの時期は、母体内で飲み込んだ血液や羊水を吐いたり、授乳を始めておっぱい(乳頭)の傷から出た血液を飲んで吐くなど、母親由来の血液を吐血や血便として排泄することがあります。赤ちゃんの排便時に直腸や肛門に傷ができて、血液が便に混ざることもあります。母親由来の血液なのか、赤ちゃんの出血なのか判断が難しいので、入院中であれば医師や助産師、看護師へ相談しましょう。

退院後このような症状があれば、出産した病院や小児科を受診しましょう。受診の際に、吐いたものや便が付着した衣類やおむつをビニール袋に入れて持参する、あるいは写真に撮って見せると診断に役立ちます。

乳児ビタミンK欠乏性出血症は、生後8日目以降~生後3カ月の間に起こります。この時期の出血は、脳内出血が多いため、不機嫌・嘔吐・けいれんなどの症状が起こります。赤ちゃんのお世話をしているときに、このような症状があれば、直ちに小児科を受診します。元気がなくグッタリとしている場合は、救急車を呼びましょう。

新生児期に起こる消化管出血を総称して新生児メレナと呼びますが、新生児メレナが起こる原因は、ビタミンK不足だけでなく、胃腸や血液の病気によって起こることがあります。

 

ビタミンK2シロップの投与方法は?

ビタミンK2シロップは、赤ちゃんの出血を防ぐためのお薬です。正期産で合併症のない新生児の場合、出生後に母乳やミルクを飲めるようになったらすぐに1回、出生後1週間あるいは退院時のどちらか早い時期に1回、生後1カ月健診時に1回の合計3回、1回につき1ml(ビタミンK2:2mg)内服する方法が一般的です。生後すぐに治療が必要な赤ちゃんは、内服ではなく静脈注射で投与することもあります。

この量で、赤ちゃんのビタミンK欠乏性出血症を防ぐことができますが、まれになんらかの合併症があった場合や内服時に吐いてきちんと飲めていなかった場合に、3回投与してもビタミンK欠乏症を起こす赤ちゃんがいます。まれなケースにも対応するために、赤ちゃんの状態に合わせて、医師の判断で、生後3カ月まで毎週1回K2シロップを投与する方法もあります。

ビタミンK2シロップの投与については、母子健康手帳に記録欄があります。出産直後から退院までの親の記憶が曖昧な場合は母子健康手帳を確認しましょう。

 

【赤ちゃんへのビタミンK2シロップの与え方】
赤ちゃんが満腹のときに与えても飲まなかったり、飲んでも吐き戻すことがあるので、授乳と授乳の間のタイミングや授乳の途中で満腹になる前のタイミングを見計らって与えるとじょうずに飲んでくれます。ビタミンK2シロップを内服した後、15分程度経過したら授乳をしてもかまいません。

赤ちゃんにシロップを飲ませるときは、哺乳瓶の乳首部分だけ取り外して、乳首だけをくわえさせて、吸い始めたらシロップを入れて飲ませましょう。哺乳瓶がない場合は、スプーンで飲ませてもよいです。母乳や育児用ミルクに混ぜて哺乳瓶で飲ませてもいいですが、赤ちゃんが飲み切れる量(目安:10ml以下)に調整しましょう。

ビタミンK2シロップは1回分を個別包装してあります。飲ませるときは、赤ちゃんの口唇を傷つけたり、包装の欠片を誤嚥することを防ぐため、スティック状の包装のままで絶対に与えないでください。

ビタミンK2シロップが内服時に半分以上こぼれてしまった場合、あるいは内服直後に半分以上吐いてしまったら、次回の分(予備の分)を飲ませましょう。半分以上飲めていない状況でもう1回分飲ませても過剰投与にはなりません。ビタミンK2シロップを内服した後15分以上経過して吐いた場合は、追加して飲ませる必要はありません。次回の分(予備の分)がない場合や吐いて心配な場合は、処方してもらった病院へ電話相談あるいは受診して相談しましょう。

ビタミンK2シロップを飲ませ忘れた場合は、親が気づいた時点で飲ませてください。生後3カ月まで毎週1回飲ませる方法の途中で飲み忘れた場合は、2回分を1度に飲ませてはいけません。飲ませ忘れたことに気づいて1回分飲ませた後、次回からは指示されている日時に飲ませて大丈夫です。もしすでに2回分を1度に飲ませた場合は、処方してもらった病院へ電話相談あるいは受診して相談しましょう。

 

赤ちゃんの体内のビタミンKを補うためにできること

生まれたての赤ちゃんはビタミンKが不足しやすいので、ビタミンK2シロップを医師の指示どおりに飲ませましょう。親の判断で飲ませることをやめないでください。

育児用ミルクにはビタミンKが添加されているので、主に育児用ミルクだけで育つ赤ちゃんや授乳の半分以上を育児用ミルクで補っている赤ちゃんはビタミンK不足の心配ありませんが、母乳だけで育つ赤ちゃんは、母乳に含まれるビタミンKが少ないため、出血性疾患を予防するためにビタミンKを補う必要があります。母親がビタミンKを多く含む食品を食べることで、母乳中のビタミンKの濃度が高くなることがわかっています。母乳だけで育てている場合は、母親がビタミンKを多く含む食品を食べるように心がけましょう。ただし、母親が血液を固まりにくくするお薬(例:ワーファリン)で治療中の場合は、お薬の効果を弱めてしまうため、ビタミンKを多く含む食品を食べることは避けましょう。

【ビタミンKを多く含む食品】
 卵(特に卵黄)
   緑黄色野菜(ほうれん草 ブロッコリー パセリ 三つ葉 春菊など)
 乳製品(バター マーガリン チーズ ヨーグルト)
 肉類(鶏肉 牛肉 豚肉の順に多い)
 納豆

これらの食品を食べることで赤ちゃんの出血を予防できるとはいえませんが、産後の食事は栄養バランスが偏りやすいため、母親の食事を見直すときのヒントにしてください。

 

まとめ

ビタミンK2シロップの予防で、赤ちゃんの消化管出血や脳出血を防ぐことができます。ビタミンKは、赤ちゃんの健康を保つためには必要不可欠ですので、医師から指示されたとおりに内服させましょう。心配なことや不安なことがあれば、出産した施設あるいは小児科へ相談しましょう。

 

■参考
日本小児科学会HP
新生児・乳児ビタミンK欠乏性出血症に対するビタミンK製剤投与の改訂ガイドライン(修正版)2011
一般社団法人 くすりの適正使用協議会HP 子どもにくすりをのませるコツ

 

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    著者プロファイル

    助産師古谷真紀

    一般社団法人産前産後ケア推進協会プロジェクトリーダー。大学病院勤務を経て、2015年より現職。妊娠中や産後の女性のココロとカラダの相談、ママパパ&赤ちゃんのちょっと気になるコトに日々応えています。

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