出産してから、ぐっすり眠れた日はほとんどありませんでした。
夜中の授乳やおむつ替えで何度も起き、朝にはまた家事が始まる――そんな生活が続いて、私の心と体は限界に近づいていたのです。
専業主婦になった私を見下す夫
近くに頼れる実家もなく、私は常に疲れ切っていました。子どもの父親である夫が少しは支えてくれるものだと思っていたのですが……現実は違いました。
夫は、私が専業主婦になった途端、家事も育児もすべて私に任せるようになったのです。
「俺が専業主婦だったら、もっとうまく時間を使える」
そう言われたとき、言葉を失いました。
夜泣きでほとんど眠れていない日でも、私が少し横になろうとすると、「昼間から寝るなよ! 主婦はいい身分だな」と嫌みを言われます。家事が少しでもおろそかになっていると、細かく指摘されることも増えていきました。
思い切って「少しだけでも手伝ってほしい」と伝えたこともあります。しかし返ってきたのは、「俺は仕事で疲れてるんだ」という言葉でした。そのまま不機嫌になり、会話も続きません。
育児の大変さ以上に、「一緒にやっていけない」という孤独のほうが、私にはつらく感じられるようになっていました。離婚という言葉が頭をよぎることも……。
それでも、以前のやさしかった夫に戻ってほしいという気持ちを、完全に捨てることはできませんでした。
夫にすべて任せてみた結果
心身ともに限界を感じた私は、ある手段に出ることに。
ある日、私は近くに住む義両親に相談したうえで、数日間家を空けることにしました。夫に娘の世話を任せ、私はホテルで休むことにしたのです。夫は「楽勝だろ」と鼻で笑っていました。
しかし、外出してしばらくすると、案の定、夫から何度も電話がかかってくるように……。
「どうして寝かせてもすぐ泣くんだ?」
「夜なのに何回も起きるのは普通なのか?」
「ミルクってこんなに欲しがるものなのか?」
育児に関わっていれば、最初の段階で生じる疑問ばかり。そのたびに説明はしましたが、電話口の向こうで焦っている様子が伝わってきました。
さすがに娘を夫1人に任せるのは不安だったため、義両親には日中様子を見に行ってもらっていました。夫は義両親にも助けを求めたようですが……義母は「父親なんだから、自分でできないと!」と彼を一蹴したそうで、後日その様子を私に笑って話してくれました。
一方の私は、久しぶりにまとまった睡眠をとり、ゆっくり体を休めることができました。
夫が変わった理由
数日後、自宅に戻ると、夫は明らかに疲れ切った様子でした。私が夫の腕から娘を抱き上げると、安心したように息をつき、「こんなに大変だと思わなかった」とぽつりとこぼしました。
そして、「今まで本当にごめん」と、涙ながらに謝ってきたのです。
たった数日ではありましたが、夫にとっては十分すぎる経験だったようでした。その後は、以前のように家事や育児に関わる姿勢が戻り、少しずつですが、協力し合える関係に変わっていきました。
落ち着いたころ、夫に「どうしてあんなふうに変わってしまったのか」を聞いてみると、「子どもに取られたような気がして……」と話してくれました。
正直、思いもよらない理由でした。自分の寂しさを言葉にできず、攻撃的な態度でしか自分を誇示できなかった夫の未熟さに、複雑な思いが込み上げました。振り返れば私自身、育児に必死で、夫の気持ちにまで気が回っていなかった部分があったのかもしれません。
育児は、想像以上に大変です。思い通りに進まないことばかりで、自分のペースで動くこともできません。だからこそ、夫婦で支え合うことが欠かせないと、今回の出来事を通して実感しました。
少し強引な方法ではありましたが、夫に現実を知ってもらえたことは、大きな一歩だったと思います。お互いの大変さを理解し合うことが、家族として前に進むためには欠かせないと感じた出来事でした。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。