存在しない「弟」との不倫宣言
「ねえ、私、あなたと離婚したいの。実は、あなたの弟さんと付き合ってるんだ。内緒にしていてごめんねw」
仕事中にかかってきた電話。あまりに突拍子もない告白に、僕は自分の耳を疑いました。離婚? 浮気? しかも相手が僕の「弟」……?
「……何を言ってるんだ? 離婚したいというのはともかく、相手が僕の弟ってどういうことだよ。僕に弟なんていないぞ」
すると妻は、電話の向こうで勝ち誇ったように笑いました。
「また嘘をついて! 彼から全部聞いたわよ。あなたが優秀な彼にずっと嫉妬して、親戚中に存在を隠してきたって。お母さんの旧姓まで知ってたんだから、隠しきれないわよ。彼はあなたの100倍イケメンだし、相性も最高なの。もうあなたみたいな地味な人には戻れないわ。ごめんね!」
そう一方的にまくしたてると、妻は電話を切ってしまいました。
詐欺師に心酔し、家を飛び出す妻
その日の夜、帰宅すると妻はすでに荷物をまとめていました。そして、スマホに映る「男」の写真をこれ見よがしに突きつけてきたのです。
「見て。今日も一緒にいたの。顔もスタイルも、あなたとは月とスッポンね。彼、投資家として大成功しているんですって。あなたが隠していた実家の資産も、彼が全部運用してくれているそうよ。もう二人で海外に行くから、早くこの離婚届に判を押して」
スマホの中の男は、確かにモデルのような整った顔立ちをしていました。しかし、僕には見覚えすらない赤の他人。そもそも僕に似てすらいません。僕は呆れ果てました。
「いいか、落ち着いて聞いてくれ。僕は正真正銘の一人っ子だ。その男が何を言ったか知らないけれど、それは真っ赤な嘘だ。君は完全に騙されているんだよ」
しかし、一度思い込んだ妻に僕の言葉は届きません。
「往生際が悪いわね! 惨めったらしくて本当に嫌気がさすわ」
妻は吐き捨てるようにそう言うと、無理やり判を押させた離婚届を奪い取るようにして、夜の街へと消えていきました。
突きつけられた残酷な真実と結末
一ヶ月後、ボロボロに泣き崩れる妻から電話がありました。
「助けて……全部嘘だったの。私の貯金、彼が全部持って消えちゃった……」
話を聞くと、あの「自称・弟」に、投資資金という名目で合計800万円近くを渡してしまったとのこと。お金を渡した翌日に男は音信不通。豪華なマンションも、実はレンタルルームだったそうです。
妻は「やり直したい」と縋り付いてきましたが、僕の気持ちは冷めきっていました。
「やり直す? 冗談じゃない。僕は何度も『弟はいない』と言ったよね。それを嘘だと決めつけて僕を蔑んだのは君だ」
この日を最後に、彼女との関係を完全に断ち切りました。
その後、妻は自業自得とはいえ、多額の借金と孤独を抱えることになったそうです。
僕は、ようやく手に入れた静かな日常を大切に過ごしています。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。