結婚してしばらくすると、夫の態度は少しずつ変わっていきました。
「専業主婦なんだから、掃除くらい完璧にしろよ」
「晩飯のおかず、これだけ? 一日中家にいて何してたの?」
そんな言葉を、当たり前のように浴びせてくるようになったのです。
最初は「私の努力が足りないのかもしれない」と思い、必死に家事をこなしていました。しかし、どれだけ頑張っても夫の文句は減ることはありません。
やがて私は気づきました。夫は私に専業主婦になってほしかったのではなく、「自分が養っている」という立場を利用して、優位に立ちたかったのだと――。
外では“理想の夫”を演じる夫
知人から聞いたのですが、夫は外ではまったく別の顔を見せていました。
「妻に苦労させたくないから、仕事は辞めてもいいって言ったんだ」
「もちろん、家事もちゃんと分担してるよ」
そのように話し、周囲からはやさしい夫として見られていたのです。しかし実際は、家では私を見下し、いかに自分がすごいかを語り続ける毎日。
「俺は職場でもモテているからな」と得意げによく話していた夫でしたが、若い女性社員に気を使われているだけなのは明らかでした。そんな夫に、次第に私はうんざりしていったのです。
軽い気持ちの「離婚話」
ある日のことでした。夫が少し神妙な表情で帰宅し、突然こう言ったのです。
「実はさ、気になる女ができたんだ。だから別れよう」
あまりに唐突な言葉でしたが、不思議と私は落ち着いていました。
「そうなんだ。好きな人ができたなら、仕方ないね」
その瞬間、夫の表情が一変しました。
「え? いや、普通は止めるだろ?」
「……いやいや、冗談だって! 本気にするなよ」
「離婚したら、俺に養ってもらえなくなるんだぞ?」
どうやら夫は、私の反応を試したかっただけのようでした。離婚をちらつかせることで、自分が優位であることを再確認するつもりだったのでしょう。
すでに決まっていた私の心
しかしそのときにはもう、私の気持ちは決まっていました。夫への愛情は、とっくに消えていたのです。
愛情が冷めていく中で、私は夫のモラハラ的な言動を記録として残していました。万が一に備え、証拠を集めていたのです。
「好きな人がいるんでしょ? だったら離婚しましょう」
「私も、ずっと離婚したいと思っていたの」
そう伝え、用意していた証拠を見せました。
夫は顔を真っ青にして、「悪かった」「やり直したい」と必死に謝ってきました。しかし、一度冷めきった気持ちは戻りませんでした。
その後、話し合いを重ね、正式に離婚が成立しました。
離婚後、私はひとり暮らしを始めました。誰かに小言を言われることもなく、自分のペースで過ごせる毎日は、想像以上に穏やかです。結婚前に勤めていた会社に復職して、仕事にも打ち込むようになりました。
振り返ってみると、「養ってもらっているから我慢しなければならない」と思い込んでいた自分がいたのだと思います。しかし、本当はそうではありませんでした。
自分の人生は、自分で選んでいい――そう気づけたことが、何よりの収穫だったと感じています。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。