「嫌なら違う業者にするw」理不尽な要求
その取引先は、長年付き合いのある中堅メーカーでした。前任の担当者とは良好な関係だったのですが、最近異動してきたというS部長がかなりの曲者。彼はコストカットばかりを口にし、現場の苦労などお構いなしです。
ある日、そのメーカーの工場の基幹システムが故障し、僕が急行しました。かなり複雑な故障でしたが、僕の特許技術を使えば、本来なら数日かかる修理も数時間で終わります。無事に作業を終え、報告に行くと、S部長はまさかの要求をしてきました。
「お疲れ。あ〜今回の修理代だけどさ、半額にしてよ」
あまりの言い草に、僕は耳を疑いました。
「……半額ですか? 事前の見積もり通り、部品代も手間もかかっています。それは不可能です」
すると彼は、手に持った万札をひらつかせながらニヤニヤと笑い、小馬鹿にしたように言い放ったのです。
「いや修理の様子ちょっと見てたけどさ、ササッとできるような簡単な作業じゃない? こんなことくらいでこの作業料は高すぎるでしょ。嫌なら違う業者にするよw」
限界を迎えた僕の決断
S部長の態度はさらにエスカレートし、「僕が以前付き合いのあった他社は2日がかりの修理もこの半額だった」「修理なんてどこに頼んでも同じだし」と、僕の技術を否定するかのように罵倒し始めました。
プロとして、そして一人の人間として、僕の中で何かがぷつりと切れました。
「……わかりました。そこまでおっしゃるなら、もう結構です」
僕は手に持っていた工具箱を静かに閉じました。
「それならもう、今後御社の修理には伺いません。半額で受けてくれる『代わりの業者』を、どうぞご自由にお探しください」
そう伝えると、そばにいた社員たちも「ナイス部長!」「コストが浮いた分、俺たちのボーナスに回してくださいね」など調子のいいことを言っています。僕は悲しい気持ちでその会社を後にしました。
止まった工場と、青ざめた部長
それから数ヶ月、僕は別の現場で修理の依頼をこなしながら、穏やかな日々を過ごしていました。そんな僕のスマホに、ある日、何十件もの着信が入っていました。
話を聞くと、あのメーカーの工場で再びトラブルが発生。しかし、僕の技術なしでは修復不可能で、ラインが完全にストップしてしまったというのです。他社を呼んでも「これは特殊すぎて手が出せません」と断られ、損害は数百万円単位に膨れ上がる勢いだとのこと。
「頼む、今すぐきてくれ! 修理代は倍の金額払うから!」
S部長の必死な声が響きましたが、僕は冷静に返しました。
「お断りします。僕はいま、別の現場で手一杯ですし、そもそも『代わりはいくらでもいる』と言ったのはそちらですよね?」
結局S部長は、業界でも最も技術料金が高いと評判の修理業者に依頼して、システムをなんとか復旧。それでも工場がいつも通り動き出すまでに数日かかってしまい、会社に大損害を与え、親会社から厳しく責任を追及されているそうです。
一方の僕は、技術を認めて必要としてくれる取引先に恵まれ、充実した毎日を送っています。技術と敬意を軽んじる人に、明るい未来はないのだと痛感した出来事でした。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。