いつものように仕事を終え、私が娘と一緒に夕飯の準備をしていると、珍しく夫が早く帰ってきました。すると、開口一番「俺、今週末出張になった!」と言い出したのです。
夫は一体どこへ行くつもりなのか…?
夫の仕事は内勤の事務職なので、結婚してからこれまで一度も出張など行ったことがありません。私が驚いていると、「本来行く予定だった先輩に不幸があって、俺が代打で行くことになったんだ」と説明しました。
一瞬納得しかけたのですが、徐々に夫の様子が不自然に思えてきました。
「どこに出張に行くの?」
娘が無邪気にそう聞くと、夫は一瞬だけ目を泳がせました。
「九州の熊本だよ」
すぐに答えたものの、どこかぎこちない夫の様子が気になり、私は続けて尋ねました。
「熊本のなんて会社に行くの?」
すると夫は、明らかに言葉に詰まりました。
「えっと……あれ、会社名なんだったかな。もしかしたら、場所も熊本じゃなかったかもしれないな」
出張先の会社名どころか、行き先まであいまいな夫。それでも娘は、何も知らない顔で「熊本かー! お土産待ってるね!」と笑っていました。
そのやり取りを見て、私は直感的に「出張は嘘だ」と気がつきました。
実はその少し前から、夫の行動に怪しい点があったのです。家の中でもスマホを肌身離さず持ち歩くようになり、画面のフィルムを覗き見防止のものに変え、パスコードも変更されていました。
私は、ネットで調べた探偵事務所の無料相談に駆け込み、出張だと言う週末の行動調査を依頼することにしました。
真実の愛を見つけた夫
後日、探偵から渡された報告書には、家から車で2時間ほどの温泉地で、若い女性と腕を組んで歩く夫の姿がはっきりと写っていました。出張ではなく、ただの不倫旅行だったのです。すでに夫への愛情は冷めきっていたため、ショックというよりも「やっぱりな」というあきれた気持ちのほうが勝っていました。
決定的な証拠を手に入れた私は、どうやって離婚を切り出そうか考えていました。数日間、タイミングをうかがっていたところ、ある夜、帰宅した夫が、自ら一通の手紙を差し出してきました。中身は、記入済みの離婚届でした。
「真実の愛を見つけたから別れてほしい」
まさか不倫をしている側からそんなセリフを聞くとは思わず、私はあぜんとしましたが、よろこんで離婚に同意しました。
そして私が探偵の報告書を突きつけると、夫は顔面蒼白になりました。どうやら「好きな人ができた」とだけ言えば済むと思っていたようで、出張と嘘をついて不倫旅行に行っていた証拠まで押さえられているとは思っていなかったようです。
しかし、不倫相手と一緒に住むために早く別れたかったようで、その後、夫は私が提示した慰謝料と養育費の条件をすんなり飲み、公正証書も作成し、正式に離婚しました。こうして、私たちの結婚生活はあっけなく終わりを迎えたのです。
変わり果てた姿で戻ってきた夫の末路
離婚して数カ月がたったころ、共通の知人から「元夫が不倫相手の借金の保証人になり、その後相手の女性が蒸発して困窮しているらしい」という噂は耳にしていましたが、私はすでに関わりを断っていたので気に留めていませんでした。
ところが、離婚から1年ほど経った休日のことです。私が住み続けていたマンションのインターホンが鳴り、モニターを見ると、そこには元夫の姿が。直接話すのは気が進みませんでしたが、居留守を使って家の前で騒がれても困るので、チェーンをかけたまま玄関のドアを少しだけ開けました。
「ただいま! 1人で大変だっただろ?」
「俺、真実の愛に気づいたんだ。だから、もう一度やり直そう!」
1年ぶりに見た元夫は、身なりもだらしなく、以前よりずっと老け込んで見えました。生活が苦しくなり、都合よく私の元へ戻ろうとしているのは見え見え。玄関先で必死に私や娘の気を惹こうと話しかけてくる元夫ですが、玄関にやってきた娘は、元夫の顔を見るなり完全に無視を決め込みました。
すると、元夫は思い通りにならないことに腹を立てたのか、「パパが帰ってきたんだぞ!」と大声を出したのです。
恐怖を感じた娘が「パパー!」と叫びました。娘の言葉に、元夫の表情は一瞬明るくなりましたが、直後に部屋の奥からひとりの男性が玄関に現れると、「お前、誰だよ!」と険しい顔つきに変わりました。
実はその男性は、私の現在の夫であり、娘が「パパ」と呼ぶ再婚相手。私が再婚したことを知った元夫は、「再婚なんて聞いていない! 今すぐ別れて俺とやり直せ!」と、玄関先でさらに大声で騒ぎ始めました。
近所迷惑になりますし、これ以上まともな話し合いは不可能だと判断した今の夫が、冷静に警察へ通報しました。ほどなくして到着した警察官に事情を説明すると、元夫は警察官に注意と説得を受け、渋々帰っていきました。
それ以来、元夫が家に来ることはなくなり、今どこで何をしているのかは知りません。私も新しい家族とともに、今度こそ平穏な日常を大切に育てていこうと思います。
◇ ◇ ◇
身勝手な理由で家族を捨てたにもかかわらず、困窮したとたんに都合よく復縁を迫り、思い通りにならないと大声で騒ぎ立てる……。あまりにも身勝手な行動に、あきれてしまいますね。身勝手な相手に振り回されそうになったときは、感情的にならず、必要であれば第三者を頼るなどして、冷静に距離を取りたいですね。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。