合格の報告と突然の絶縁宣言
娘は元妻・A子の連れ子で、私とは血のつながりがありません。それでも、10年間一緒に暮らした、私にとって大切な娘でした。娘は弁護士を目指して勉強を続けており、離婚するときも、娘が経済的な理由で進路を諦めることは避けたいと思っていました。
そこでA子と相談し、娘の生活費や学費に充てるため、毎月決まった額を送ることにしました。その月に使わなかった分は、進学や、その後の研修などに備えて娘のために残しておく約束でした。離婚当時は娘がまだ学生だったため、A子の口座へ振り込む形にし、その後も同じ方法を続けていました。お金の管理はA子に任せていました。
司法試験の合格発表があった日、娘から電話がかかってきました。「司法試験、受かったから」と聞き、私は「おめでとう。よく頑張ったね」と伝えました。
電話の向こうからは、楽しそうな笑い声が聞こえていました。娘によると、A子とその恋人、恋人の娘も一緒にいて、これから合格祝いの食事に行くところだというのです。
ところが、娘は私に向かって冷たい声で続けました。
「もう仕送りはいらない。月にたった10万円で父親面しないで。ママも、もう関わらなくていいって言っているし」
私は言葉を失いました。電話の向こうでA子が「早く切って、みんな待っているから」と促す声が聞こえました。
「待って。仕送りの金額だけど……」
説明しようとしましたが、娘は「お金の話はもういいから。これからは連絡もしないで」と遮りました。私はそれ以上言葉を続けられず、「わかった。こちらからの連絡は控えるよ」と答え、電話を切りました。
ただ、合格後には司法修習という実務を学ぶ研修などがあり、すぐに弁護士として働けるわけではありません。支援を断って本当に大丈夫なのか、心配は残りました。
後日、A子に娘からの連絡を伝え、娘のために残しておくよう頼んでいたお金で、修習中の費用を賄えるのか確認しました。A子からは「大丈夫。娘のためのお金は取ってあるので、今後の仕送りは不要です」と返事がありました。私はその説明を信じ、最後の振り込みを済ませました。
1人暮らしを始めた娘の疑問
それから数カ月後、娘から「仕送りのことで、聞きたいことがある」と連絡がありました。会って話したいと言うので、休日に待ち合わせることになりました。
娘によると、司法修習に合わせて1人暮らしを始めたそうです。修習中に支給される給付金はありましたが、転居時の出費で貯金が減ったうえ、A子から約束されていた援助も十分に届かず、生活費のやりくりに困っていると言います。
「ママは『修習のために貯金してあるから大丈夫』って言っていたの。でも、必要な費用を相談したら、『もう出せるお金はない』って……」
私は、黙って続きを聞きました。
「今までは、仕送りは月10万円だけで、足りない学費や生活費はママが自分の貯金から出しているって聞いていたんだ。司法修習中の生活費も、ママが自分のお金を貯めて用意してくれていると思っていたの」
しかし、貯金がどうなったのか尋ねても、A子は説明を避けたそうです。
「ママにお金がないなら、今まで足りない分はどうしていたんだろうって。それで、もしかしたら、仕送りは10万円より多かったんじゃないかと思ったの。毎月、本当はいくら送ってくれていたの?」
私は、ネット銀行の振込履歴を見せました。そこには、A子の口座へ毎月30万円を送っていた記録が残っていました。
母親が隠していた仕送り額
「30万円……? 毎月?」
娘は日付と金額を何度も見比べていました。私は「君の生活費と学費、それから修習中に困らないよう、残った分は取っておいてほしいと伝えていたんだ」と説明しました。
娘はしばらく黙った後、「ママにも確認したい」と電話をかけました。私が一緒にいることを伝え、スピーカーに切り替えました。
「仕送り、毎月30万円だったんだね。どうして10万円しかもらっていないって言っていたの? 私のために取っておいたお金は?」
A子は「学費も生活費もかかっていたんだから、残っているわけないでしょ」と答えました。しかし、娘は納得しませんでした。私も「仕送りを終える前に確認したときは、『娘のためのお金は取ってある』と言ったよね。残っているわけがないというのは、どういうこと?」と尋ねました。
A子はしばらく言葉を濁していましたが、やがて、娘のために残しておくはずのお金を、ブランド品の購入や自分の旅行にも使っていたと認めました。娘の学費などを払った後、残ったお金を自分の買い物や遊びに使い、修習のための貯蓄はほとんど残していなかったのです。
そして、開き直ったように「ずっと娘の世話をしてきたんだから、私だって少しくらい楽しんでいいでしょ」と言いました。私はその言葉に腹が立ち、
「君の買い物のために送ったお金じゃない。娘が勉強を続けるために託したお金だよ」
と返しました。
今後の生活費については、まず娘がA子に、仕送りを何に使い、いくら残っているのか確認することになりました。そのうえで、娘の収入だけではどのくらい足りないのかを確かめ、私にできる支援を改めて話し合うことにしました。
娘の言葉に傷ついた気持ちが、すぐに消えたわけではありません。その後、娘からあのときの言葉について謝罪もあり、私は傷ついた気持ちを正直に伝えました。この日をきっかけに、少しずつ娘と連絡を取り合うようになりました。
まとめ
私は、仕送りを続けていれば、娘を支えたいという気持ちも伝わっていると思っていました。お金の管理をA子に任せたまま、娘がどんな説明を受けているのかまでは、確かめていなかったのです。
娘の言葉はつらいものでしたが、その後、娘から謝罪を受けたとき、無理に「もう気にしていない」と言わず、傷ついた気持ちを伝えられました。娘を大切に思うことと、自分の気持ちを我慢することは、別なのだと感じています。
これからは、お金のことだけでなく、日々の暮らしや困っていることも、娘と直接話していきたいと思っています。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
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