出産前後のママに「搾乳器(搾乳機)は買っておいたほうがいいでしょうか?」という質問をよくされます。ママたちが悩みやすい、搾乳器の購入する上でおさえておいてほしいポイントについて、助産師・国際ラクテーションコンサルタントの視点からお話します。
搾乳するのはどんなとき?
こんなときに搾乳をする必要が出てきます。
・赤ちゃんが入院していて直接母乳をあげられない
・赤ちゃんが眠りがちであったり哺乳力が弱かったりして、直接授乳だけでは飲みとれる量が少ない
・乳頭の形等で赤ちゃんが直接吸うことができない
・母乳分泌を増やしたい
・赤ちゃんが寝入ってしまって起きずに、おっぱいが張ってつらい
・お出かけなどで、他の家族などに預ける場合
・保育園などに預けていて日中授乳できない場合
・哺乳瓶に慣れるため、搾乳を母乳瓶であげる練習
搾乳器が必要になるのはどんなとき?
搾乳は、自分の手で搾る方法と、搾乳器で搾る方法があります。
また、産後早期の乳管の開通が少ない時期だと、搾乳器では母乳量が少量しか採取できない場合もあり、手搾乳のほうが量が多くなる方もいます。直接の母乳ではたくさん分泌されるのに、搾乳では催乳反射が起きづらくなって採取量が少なくなってしまうこともあります。
搾乳器が必要になるのは以下のような場合です。
・手搾乳ができない(手技の習得には少しコツがいるため)
・腱鞘炎などで手の痛みがあり、手搾乳が難しい
・搾乳をできるだけ短時間で終わらせたい
・手搾乳の場合、搾乳採取時に母乳が飛び散ったり、乳房の下から母乳が滴れてしまったりして取りこぼしが多い
・両乳房からの同時搾乳(電動のダブルポンプタイプ)で、刺激を増やし分泌量アップを図りたい、時間が短縮したい
おすすめの搾乳器はどんなもの?
搾乳器には、手動と電動があります。
赤ちゃんの飲み方の特徴からみると、最初に細かいストロークの吸い方で乳頭を刺激して、催乳(母乳が分泌してくる)してきたら大きなストロークで飲みます。この飲み方を再現するものや、途中で切り替えができるタイプの搾乳器がおすすめです。
もし、違うタイプであっても最初に前搾乳(少し分泌してくるまで搾乳)してから搾乳器を使うと同様の効果が期待できます。搾乳器は乳房にあたるカップの穴と、乳頭の大きさがあっていないと効果的に搾乳できないことがあります。乳頭の直径を測ったり、可能であれば助産師に見てもらってから購入するほうが安心です。
電動は高額なものもありますが、手動で握って圧をかけるのに手が疲れたり、腱鞘炎などの手の痛みがある方にはおすすめです。また、赤ちゃんが入院中などで母子分離のために長期間搾乳が必要の場合も良いかと思います。反対に、たまに使用する程度の予定であればコストからみて手動タイプの搾乳器で十分かと思います。
搾母乳の保存・取り扱い方
搾乳は消毒した容器におこない、保存するときも消毒したフタ付きの容器に保存します。消毒した母乳瓶に搾乳後、フタをして保存すると便利です。持ち運びや冷凍する場合は、市販されている母乳用の滅菌パックを使用するのも良いでしょう。常温では4時間(室温19〜26度)、冷蔵では72時間(4度以下)、冷凍は3カ月保存が可能です。※正期産で出生した健康な児を対象。
家庭用冷蔵庫は開閉などで温度が上がりやすく、4度以下は保てないときもあり、24時間としている文献もあります。
温めるときは、電子レンジや熱湯での湯煎は、母乳の中の細胞成分が破壊されてしまうため避けましょう。搾乳は40〜50度程度のお湯で湯煎してください。冷凍したものは常温において解凍するのは避け、凍ったまま湯煎するか冷蔵庫内で解凍しましょう。搾乳は一回ごとに保存し、一つの容器に追加しながら保存するのはやめましょう。搾乳をあげるときは、複数回分を一つにまとめてあげても大丈夫です。
産後のママや赤ちゃんの様子で、搾乳器が必要か、どのようなタイプが良いか変わってきます。産前には、搾乳器の種類や購入できる場所、値段などの情報収集は大切ですが、購入するのは産後が良いかもしれません。
<引用・参考>
ラ・レーチェ・リーグ・インターナショナル
June 2008,2006,1998 No.10134 Strong Human Milk
2009年日本語初版訳「しぼった母乳の保存と取り扱い方」「母乳の保存についてのガイドライン(指標)」