「横隔膜ヘルニア」という先天性疾患を抱えて生まれたお子さんを持つママの体験談をお届けする連載企画です。横隔膜ヘルニアとは、本来胸とおなかの臓器を隔てている横隔膜に生まれつき穴が開いており、その穴からおなかの中の臓器が胸の中に出てきて心臓や肺を圧迫してしまう病気。
おなかの子が横隔膜ヘルニアであると診断された妊娠中から出産までのできごとやママが感じた不安、生まれたお子さんの様子やその後の治療についてご紹介していきます。
息子を産んでからというもの、3〜4時間おきに搾乳をおこない、母乳を出し続けてきた私。しかし、息子の退院を控え、医療的ケアのことを具体的に習い始めると、並行して母乳育児をおこなうことへの不安が膨らみ始めました。
搾乳間隔の空きから母乳量が減少
息子が生まれてから3カ月、いよいよ退院に向けてGCU(新生児治療回復室)を出ることになりました。それまでいたNICU、GCUには搾乳器や搾乳のための部屋などがあり、お見舞いの途中でも搾乳ができて助かっていました。
しかし、さまざまな世代の子どもたちがいる普通病棟に移ったことで、病室での搾乳は難しくなり、だんだんと搾乳の間隔が空く日が増えるように……。もともとそれほど母乳量が多くなかったこともあり、私の母乳は息子が飲む量の半量程度しか出なくなってしまいました。
授乳のほうが手間がかかる?
このころ、息子は私のおっぱいから直接母乳を飲むことができるようになっていましたが、どれくらい飲んだかを記録するため、必ず授乳前後にベビースケールに載せて体重を量らなければなりませんでした。
退院してから上の子もいる環境でいちいち体重を量り続ける自信がありませんでしたし、そもそも家にはベビースケールがありません。また、直接授乳のあとも必ず育児用ミルクが必要だったので「最初から全部ミルクのほうが量もはっきりするしラクなのでは?」という考えが私のなかに生まれ始めていました。
考えることを1つでも減らしたい
退院が近づいてきて、医療的ケアについて具体的に習い始めると、人工呼吸器が鼻にちゃんとついているか、回路に結露はたまっていないか、加湿用の水は足りているか、血中酸素濃度の値は大丈夫かなど、思った以上に考えることが無数にありました。
そんな退院後の生活で母乳について悩む余裕は到底ないように思えて、私は母乳をやめることにしました。
母乳をやめてよかったこと
飲んだ量が明確、母乳より授乳間隔が長くなるなど母乳をやめてよかったことはたくさんありましたが、なかでも一番私にとって大きかったのは「お酒が飲める」ということでした。
医療的ケア児との生活は思った以上にさまざまなストレスがあったため、もし母乳育児で食事制限があったら私はきっと乗り切れなかったと思います。満足に遊びにも行けないなか、「大好きなお酒とおいしいごはん」を楽しむことは私の貴重なストレス解消法でした。
息子の母乳育児を諦めたのは完全に私の都合だったので、当時は少し申し訳ない気持ちもありました。しかし、こうやって「母である自分を甘やかす」ことも医療的ケア児を育てるうえでは不可欠だったと感じています。育児用ミルクをたくさん飲んですくすく育ってくれた息子には感謝の気持ちでいっぱいです。
※本記事の内容は、必ずしもすべての状況にあてはまるとは限りません。必要に応じて医師や専門家に相談するなど、ご自身の責任と判断によって適切なご対応をお願いいたします。
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監修/助産師REIKO
著者:岩崎はるか
2女1男の母。両実家とも遠方のためワンオペ育児中。先天異常の影響で肺が片方しかない医療ケア児を含む3人の子を育てた育児体験談のほか、大学院まで学んだ食についても執筆。