父親の育児参加について詳しい大阪教育大学教育学部教授、小崎恭弘先生に伺いました。「パパの”やっているつもり”育児あるある」をお話しします。
パパの"やっているつもり"育児とは!?
何も分からない新米パパ、ママのハードル高くない?
元保育士の小崎先生は、男の子3人の子育てを経験した先輩パパ。それぞれで育児休暇をとり、積極的に育児へ参加してきました。新米パパだった当時を思い出し、パパを代表してこう弁明します。
「パパがつらいのは、パパもどうやったらいいか分からないということです。私は保育士だったけれど、自分の子の育児となると、最初はよく分かりませんでした。パパだけが悪いのではない。ママのハードルが高いのです(笑)パパがじょうずにできないと、ママはイライラするでしょ?」
たしかにママは露骨にイライラしてしまっているかもしれません……。
「けれどもママの気持ちも分かるのです。今まで自分のやり方でやってきたので、いちいちパパに教えるのは面倒くさい。なので自分がやったほうが早い。しかし、もっと寛容になることが必要です」
小崎先生はプレパパママセミナーで、ママたちに対して「子どもを育てるように、パパも育てて欲しい」と呼びかけるそうです。
「だって家事育児が苦手という男性は、一気にはできないのです。初めての育児のとき、ママもよくわからないうちに“ママ”になっていったと思います。出産まで赤ちゃんのおむつを替えたことがなかった人も多いですよね。やっているうちになんとなくできるようになる。子育てのゴールはまだまだ先。先は長いですから、パパを巻き込んでいくことが大事です」
一方で、パパにも苦言を呈します。
「パパもママはなんでもわかっている! と勘違いしてはダメです。ママもゼロからのスタートです。生まれる時点から主体的にパパには関わってほしいと思いますね。子育ては大変だけれど楽しいことでもありますから」
そこで、パパの”やっているつもり”育児あるあるについて、小崎先生に検証してもらいました。
パパのやりがちNG1! ゴミは出すが、まとめるのはママ
朝ゴミを出してくれるのは助かるけれど、ただゴミを出すだけ。あとは知らん顔というパパにイラッとしてしまいます。
小崎先生:「洗濯という家事は、干して終わるわけではない。適当に干したら乾きません。洗って干して乾かして畳むところまでやって初めて“洗濯”は終わります。ゴミ出しも同じです。ママが朝、玄関にまとめたゴミを出しただけでは“ゴミ出し”とは言いません。“ゴミ移動”ですよね(笑)収集日を理解したうえで、分別して、たまったゴミ袋をまとめて、ゴミ箱に新しいゴミ袋を用意することがゴミ出しです。そうなるとゴミ袋の厚さまで気にするようになります。洗濯もゴミも他人事ではなく、自分の仕事として考えないとダメなのです」
パパのやりがちNG2! お風呂は入れても、着替えはさせない
お風呂には入れてくれるけれど、お風呂の準備や着替え担当は当然のようにママ。しかし子どものお風呂って、実は前後のほうが負担ありますよね?
小崎先生:「パパが先にお風呂に入っていて、『ママー! 連れてきて〜』というパターンです。そのあとは『もうあがるよ〜』とママに子どもを引き渡す。これでは他人事ですよね。『パパ1人でお風呂入れてみて』って思いますよね(笑)ママが1人で入れるときはどれだけ大変なのか。風邪を引かせないようにとママは1人で奮闘するのです。新生児だったらおへその処置もしないといけません。それらもパパに知ってもらうべきですね。ところが、きっとパパが1人でやっているのを見ると、手際の悪さにママはまたイライラするかもしれません(笑)」
パパのやりがちNG3! 遊び相手はしても、大が出たらママを呼ぶ
いつもは遊んでくれておむつ替えもしてくれるのに、大になった途端「ママ! 大が出た」と言ってくるパパ。大のおむつ替え=ママの仕事と思っていませんか?
小崎先生:「大のおむつ替えになった途端『ママを呼んでいるよ〜』などと言って子どもを渡してくる(笑)これもあるあるなんですよね。これは最初が肝心なのです。初めて子どもが大をしたら誰がおむつを替えますか? パパに『パパが替えて!』と言ったらいいのです。『やったことがないからママやって!』と言われたら、『私もやったことない!』と言い返せます。ママ自身、ママの仕事と思い込まないほうがいいですね。2人で話し合うことが大事です。
夫婦の価値観のメモリを合わせて
パパの「やっているつもり」とママの「やってくれない」は価値観の差に原因があるようです。
パパとママは、価値観の物差しの目盛りが違います。パパの「1」”やったつもり”は1センチで、ママの「1」は1メートルなのです。これでは生活の中で大きなズレができても当然だと思います。“やった”の目盛りが違うのです。その目盛りの幅を両方が合わせていく意識が必要ですね。パパはもちろん当事者意識をもって、普段ママがやっていることは全部やってみましょう。そして分からないことは、ママに聞いてみるべきで、ママもパパの経験不足など理解し、ハードルを下げてパパに教えてあげてほしいと思います。両者歩み寄って家事や育児について見直してみてはいかがでしょうか。
取材・文:大楽眞衣子/女性・ライター。社会派子育てライター。全国紙記者を経てフリーランスに。専業主婦歴7年、PTA経験豊富。子育てや食育、女性の生き方に関する記事を雑誌やWEBで執筆中。大学で児童学を学ぶ。静岡県在住、昆虫好き、3兄弟の母。