再婚したとき、夫とは、子どもは作らないと話し合って決めました。それなのに……。
ベビーカレンダーは、多様化している家族のあり方=“新しい家族のカタチ”について発信する取り組みを開始しました。当事者のリアルな声を紹介していきます。多様な幸せを実現できる社会、そして、もっと「家族を持ちたい」「赤ちゃんを産みたい」と思う人が増える世の中づくりの一助となりますように。
「父ちゃん」と「パパ」の存在
子どもたちは、夫のことを「父ちゃん」と呼び、前の夫のことは「パパ」と呼びます。気づいたら自然にそう呼んでいました。子どもたちは父ちゃんもパパも大好きです。私は息子たちに「愛してくれるお父さんが2人もいるね」と伝えています。夫もパパに会うことにまったく反対しません。年に数回会う程度ですが、本人たちに選択肢を作ってあげようというのが私たち夫婦の考えです。
新しい命と葛藤と苦悩
私たち夫婦が再婚するときに決めたのは、子どもは作らないということでした。養育費の支払いをしっかりしなくてはいけない、子どもたちに不自由させたくないなど、経済的な理由から決めたことでした。
しかし結婚して3年、私は妊娠しました。夫に思い切って話し、2人で話し合いました。そして2人が出した答えはやはり子どもをおろす手術をすることでした。しかしいざ、病院で書類に名前を書こうとすると手が震え、涙が溢れてきました。授かった命を手放すことが、どれ程つらいことか、夫も私も身にしみて感じたのです。そしてその後、再びよく話し合い、産むことを決意しました。
決意したときに、1番心配だったのは産んだあとの生活でした。というのも私たち夫婦は共に母親を亡くしていて、近くに頼れる人がいません。出産後、実際に大変なことがいろいろありました。何年ぶりかの授乳は、乳首が切れてしまいひどく痛み、授乳もひと苦労でした。ただそんな中、私にとって救いだったのは夫が仕事に行く前にごはんを作ってくれたり、家事を済ませてくれたりしたこと。おかげで赤ちゃんのお世話に専念しやすくなりました。そしてこのときの夫の様子を見て、私はこの人とならどんな困難が来ても大丈夫と思いました。
※人工妊娠中絶は、母体保護法により定められた適応条件を満たしている場合に限り、施行されます。
子どもたちの葛藤と夫の信念
わが家の子どもたちは、障害を持っています。長男は自閉スペクトラム、次男はADHD。精神的に難しいところが多く、トラブルも多々起こしますが良く言えば個性的です。もちろん夫も再婚する前から知っていて理解してくれています。でも理解だけではどうにもならないことが起こることも……。何度もかんしゃくを起こす息子にどう接していくか、夫婦で何度も何度も話し合ってきました。私たちだけでは解決できないことは医療機関を頼ったり、ときには夫婦で意見が食い違い喧嘩をしたりして、家の中が悪い空気になることもありました。けれど、その度に家族全員でなんとか乗り越え、立て直してきました。
小学校の先生から毎日のように電話がかかってきて頭を下げる日々が続いても、次男が暴れて仕事を抜け出し止めに入ることがあっても、もう嫌だ……こんな日々……と思っても、家族で何度も話し合うことで乗り越えられたように思います。
いつの日だったか夫に聞きました。「血の繋がり、気にしてる?」と。そしたら、「子どもたちのことをそんな風に考えたことはない」と言いました。私は驚いたと同時にこの人の信念と人柄を尊敬するようになりました。
いまだに私たちの再婚や出産などの選択が正しかったのだろうかと考えることがあります。また、周りから見たら私たちはどう映っているのか正直気になることも……。でも、そんなときは自分たちを信じようと思っています。一度うまくいかない経験をしたからこそ見える世界もあるんだということを、ステップファミリーになってから気づかされました。朝起きて「おはよう」と言える幸せに気づけて私は幸せです。これからも私たち家族のカタチを作っていこうと思います。
著者:佐藤 まなみ
7歳、6歳、1歳の子どもたちと同じ会社の上司である夫との5人家族。犬とアニメが大好きな家族。パートで働きながらも副業としてライターをやっています。北欧インテリアに関心があり、現在は整理収納アドバイザーの資格取得に向けて勉強中です。