周囲の反応に落ち込む娘
入院生活を終えて、春休みも明けたころ、娘は幼稚園の年長さんに進級しました。
手術の効果をしっかり継続するため、レチナ(※1)を鼻に装着し、テープで止めてさらに落としてなくすのを少しでも防ぐため、できるだけマスクをつけて生活するように娘に言い聞かせます。
幼稚園にもその旨を了承してもらい、新しい生活が始まりました。
(※1)レチナ:鼻の形を維持する目的で使用するシリコン製の装具
幼稚園が始まってしばらくしたある日、娘が元気のない様子で帰ってきました。
幼稚園が大好きで今まで元気のない様子で帰ってきたことが一度もなかったので、
何があったのか事情を聞くと……?
幼稚園でお友だちからレチナについて聞かれるのが嫌だという娘。
幸いにもからかわれるというような雰囲気ではなく、「それ、どうしたの?」と何度も聞かれることにへきえきするようで、落ち込んでいるようでした。
レチナにより今までとは幼稚園生活が少し違うというのは娘にとっては、大きな問題です。
レチナを付けて幼稚園に行くのが嫌だと言う娘ですが、レチナをつけなければ今回の手術の効果は得られません。
治療の継続と娘が安心して幼稚園で過ごすために何ができるかずっと考えて、まず娘の目線に立ってその気持ちを受け止めようと思いました。
娘がレチナをつけて登園するのが嫌だという気持ちは決して否定しないと、同意しながらも、「その思いを友だちに正直に言ってみてはどうか?」と提案してみました。
娘にとっては思いがけない答えだったようで、私の言葉にビックリして目を大きくしていました。
手術の成果を維持するためにはレチナを取って生活することはできない。
しかし、どうしても目立ってしまい本人が嫌だと思う気持ちは否定しない。
「私も本当はつけたくないけれど、手術をしてくれた先生とのお約束だからつけている」自分の気持ちに嘘をつかないでその気持ちをそのまま、お友だちに伝えてみることで、周囲への理解が広がるかもしれない。
また、娘から聞くお友だちの様子から、例えば、絆創膏やギプスをしているお友だちを心配するように「どうしたの?」と聞いてきたのかもしれない。
娘も私の帝王切開のおなかの傷を見るたびに「それどうしたの?」と聞くことがあり、「それはいじわるな気持ちで聞いてきたわけじゃないでしょ?」と。
「多分それと同じ気持ちで”どうしたのかな?”って気持ちで聞いているかもしれないよ?もし、それでも嫌な思いをしたり、悲しい気持ちになったらまたママに話してほしい」と伝えました。
退院時やその後の外来で、レチナについて先生から強く念押しされていたので、レチナをつけなければいけないというのは、娘も身に染みてわかっていたはずです。
しかし、治療は必要だけれどこの状況をどうしたらいいのか悩んで、私に伝えるかどうか葛藤し、落ち込んでいたようでした。
幼稚園での様子やレチナへの本当の気持ちなどを正直に言ってくれたことを改めて娘に感謝すると、話し終えたころには落ち込んだ様子も消え、笑顔を見せてくれました。
今回、娘が私を信頼して正直に気持ちを話してくれたことがとてもうれしかったです。
2013年生まれの長女くぴこは「口唇口蓋裂」ちゃん! この記事が、口唇口蓋裂についての理解につながり、ひとりでも多くの親御さんの励みになりますように。
※本記事の内容は、必ずしもすべての状況にあてはまるとは限りません。必要に応じて医師や専門家に相談するなど、ご自身の責任と判断によって適切なご対応をお願いいたします。
監修/助産師REIKO