こんにちは。小児科医の保田典子です。子どもって、親が困る言葉を使うことがありますよね。今回は「乱暴な言葉遣い」について考えてみたいと思います。
実際にベビーカレンダーの専門家相談に寄せられた相談とともに、見てみましょう。
3歳の息子と1歳の娘の育児奮闘中です。3歳の息子の言葉遣いが悪くて困っています。幼稚園に入園し、一気に言葉が出るようになり嬉しくなってきたところで、3歳を迎えたころから悪い言葉で口答えしたり、反抗してきます。もともと私も育児で手一杯でイライラする事も多く、良くない言葉遣いをしてしまっていて、息子も怒ると私の口調にそっくりで、幼稚園でも使っていないか心配です。本人に悪いという認識があって言ってるというよりは、興奮するとつい口走ってしまうといった様子なのですが、どうやって直していけばいいのか、余裕がないので私もお手上げ状態です。また、息子が一歳の妹に対しても怒って悪い言葉を使ったりするので、これから言葉を覚えていく娘に悪影響がないかとても心配です。
乱暴な言葉の原因は?
乱暴な言葉も良い言葉も、必ず「自分以外の誰か」の言葉を聞いて出てきます。まずは、子どもと一番接する時間が長い人の言葉遣いを見直してみましょう。
ママやパパ以外にも、じいじやばあば、お友だち、テレビやYouTubeなどお子さんがよく見ているメディアに出ている人、芸人さん……いろんな人の影響を受けます。その中に、乱暴な言葉を使っている人はいませんか? 初めは誰かのマネで使い始めても、慣れてくると自分の言葉としてよく使うようになっていきます。
子どもはたくさんの言葉に触れながら成長していきますので、「良い言葉だけ」を覚えていくというのは難しいです。良い言葉も悪い言葉も覚えた上で、言葉を選択して使いかたを覚えていくのです。
「ばか」「あほ」といった乱暴な言葉や下ネタを使い続けてしまう原因としては、ちょっとした反抗心だったり、相手の反応が面白くてついつい使ってしまったり、ということがあります。過剰に反応せず、しっかりと「使ってはいけない理由」を伝えていきます。
では、乱暴な言葉を直すにはどうしたらいいの?
子どもにただ「そんな言葉、使っちゃダメでしょ!」と言うだけでは直りません。どちらかというと、怒って「ダメダメ」と言っているほど、子どもは内心面白がってしまいます。もしくは親の気を引きたくて、ますます使い続けてしまうかもしれません。直していくコツとして、以下の4つを試してみてください。
①なぜ言われたら嫌かを伝える
子どもは、親が「ダメ!」と怒っても、ダメな理由までは考えていないことが多くあります。子ども自身も、周りを嫌がらせたいと思って使っているわけではないことが多いのです。
子どもに対して「(あなたは)その言葉を使ってはいけません」ではなく、「"ママは"、その言葉を言われるととても気分が悪くなります」「ほかの人も嫌な思いをすると思うよ」と伝えましょう。そうすると子どもは「そうか。この言葉は嫌な気持ちになる言葉なんだな」と理解できるようになっていきます。
②どんな言いかたならいいか考えさせる、一緒に考えてみる
①に通じるところもありますが、乱暴な言葉にもいろいろあると思います。子どもの気持ちが落ち着いてから、「この言いかたはこんな感じで言えるよね」「どうして今の言い方はダメなのかな? 人がどんな気持ちになるかな」「どんな言葉で言ったらいいかな」など、子ども自身に考えさせる方法で話し合いをしてみるのもいいでしょう。
このやり方のコツは、子どもの言った素敵な言い回しも引用して褒めること。乱暴な言葉だけフォーカスすると、せっかくお互い落ち着いて話ができても、結局説教臭くなってしまいます。言葉について、良し悪しを考える時間を作ってみてください。
③親の言葉遣いも見直す
やはり子どもが一番影響を受けるのは親です。乱暴な言葉を使わないだけでなく、使ってほしい言葉を使うよう、心がけるとよいでしょう。かくいう私自身も言葉遣いが良いとは決して言えないのでよく反省しています(一応気をつけているのですが、なかなかうまくいきませんよね)。
④ 親子ともにストレスコントロールを!
言葉についてどれだけ気をつけていても、疲れてイライラしていると言葉にも出やすいですよね。親御さんご自身にストレスがかかりすぎないようにしましょう。疲れているときは早めに休んだり、疲れすぎないように余裕をもったスケジュールにするなど、工夫をしてみましょう。
成長の過程なので慌てずに、ゆっくりきれいな言葉遣いを
下ネタや乱暴な言葉遣いは、誰しも通る道です。知らない大人に言うならともかく、お友だち同士なら「お互い様」なところもあるでしょう。乱暴な言葉を使うことは、お子さんの成長の過程の一つですので、あまり深刻に悩まなくても大丈夫です。使ってほしくない言葉は是正しつつ、良い言葉を使ってもらえるよう、親御さんも一緒に頑張りましょう。たくさんの言葉に触れて、お子さん自身で考えて言葉を選んでいけるようにしていきたいですね。