※本文内にDV被害の描写が出てきます。トラウマのある方はご注意ください。
洗脳された私
「お前は何もできない」「お前の側にいてやれるのは俺ぐらいしかいない」と彼に巧みにディスられ、そもそも低かった私の肯定感は日に日に削がれていきました。そして、見事に「こんな私を見捨てないでいてくれる彼を、私が助けてあげるべきだ」と考えるようになっていたのです。
使命感に燃える私は、すべての元凶である酒を彼から取りあげようと必死でした。お酒さえ飲まなければ、彼は明るくて楽しい人だったからです。しかし、ほとんどアルコール中毒に近い状態だった彼との戦いでは生傷が絶えず、彼を支えようと躍起になる私の視界はどんどん狭まっていきました。
二人きりの世界
私が彼から酒を取りあげると、彼は私を厳しく縛りつけました。「お前の言うことを聞いてやるから、お前も俺の言うこと以外は聞くな」という感じです。
そのころ、友人たちからひどく心配されていた私は「別れなよ」と口を酸っぱくして言われていました。しかし、私は友人たちからの心配が次第にうっとうしくなり、こちらから意識して距離を取るようになってしまったのです。すると、友人たちは私から徐々に離れていきました。
こうして彼は私をさらに束縛しやすくなり、二人きりの世界で共依存は加速していったのです。いつからか、彼は「お前とはいずれ結婚してやる」というような言葉を、暴力行為の免罪符のように使い始めました。私もその言葉を受けて、「こんな私を選んでくれるのはこの人しかいない」と思うようになっていったのです。
共依存の末路
そんなある日、私は史上最高に彼から殴られました。ふっ飛ばされた私の頭で壁に穴が開き、壁の中の配線が見え、陶器でできた洗面台は欠けて血が付いていました。殴られた理由なんて、他愛もないことだったと思います。アザだらけの私は、数少なくなった友人に助けを求めました。
それまでも彼との揉め事のたびに泣きついてきた私を、友人は呆れつつも心配して家へ招き入れてくれました。すると、「決心を固めました」といった具合で、彼が婚姻届を持って友人宅に現れたのです! そんなくだらないパフォーマンスをする男に、こともあろうか私は同情してしまいました。
彼のもとへと戻っていく私を、無表情で送り出す友人。DV男との共依存の果てに、私はすべての友人を失ってしまいました。
その後、結局私は彼にフラれ、紆余曲折を経て今の夫と結婚しました。夫との穏やかな生活の中で、本物の愛とは激しく相手を求めることではないのだと気づき、安定した精神状態でいられることの幸せを噛みしめています。夫と出会えたのはたまたま私が幸運だっただけで、DV男との日々から学んだことやプラスになったことは何ひとつありません。まったく必要のない経験だったと思っています。
時を経て、私を許してくれたやさしい友人たち。彼女たちに恩返ししていく決意とともに、不安定な関係にのめりこむと大切なものを失ってしまうのだと心に刻みました。
著者/つちやです
イラスト/おんたま
ムーンカレンダー編集室では、女性の体を知って、毎月をもっとラクに快適に、女性の一生をサポートする記事を配信しています。すべての女性の毎日がもっとラクに楽しくなりますように!