こんにちは。小児科医の保田典子です。今回は子どものインターネット利用について。5年ほど前と比べ、診察室でスマホを使って動画などを見ているお子さんがとても増えたな、と感じています。
インターネットはとても便利なものですが、子どもへの弊害はないのでしょうか? 常識が日々変わる話題ですが、今わかっていることをまとめたいと思います。
子どものインターネット利用率、使用時間は年々増加している
こども家庭庁の令和5年度の調査によると、低年齢層(0歳~9歳まで)の子どもの74.9%がインターネットを利⽤しているそうです。
年齢が上がるとともにインターネットの利用率は高くなり、通園中(0歳〜6歳)では68.0% 、⼩学⽣(6歳〜9歳)では 90.0%がインターネットを利⽤しています。
インターネットを利⽤する機器は、テレビ(地上波、BS等は含まない)(53.3%)、⾃宅⽤のパソコンやタブレット(38.0%) 、ゲーム機(35.8%)が上位となっています。
未就学児のインターネット利用で最も多いのは、動画視聴です。また、インターネットを利⽤している低年齢層の⼦どもの1日の平均利⽤時間は約2時間5分、前年度と⽐べ約3分増加しており、年々増えている傾向にあります。通園中(0歳〜6歳)の未就学児で、平日1日あたり5時間以上インターネットを利用しているという回答も4.2%ありました。
メディアの子どもへの影響は?
メディアの子どもへの影響は、まだ理解がきちんと進んでいない側面があります。その中わかっていることは、「2歳までの子どもはスクリーンから学べることは少ない」ということです。英語教材などにしても、2歳まではテレビからの教育効果はなく、実際の人間の教育であれば効果が認められています。
2歳までの場合
2歳までの子どもに対しては、親など周りの人たちの表情などの反応によって発達が促されますが、メディアからの発達への良い影響はないようです。
例えば、コロナ禍でマスク生活になることによって、大人の表情がわからなくなったことによる0歳から2歳までの発達の影響はあるのではないかと言われています。
目を見て、表情を感じて、という日常が2歳までの赤ちゃんにとって重要なようです。
3歳以降の場合
3歳以降はテレビなどメディアからでも教育効果があるとされています。セサミストリートを視聴すると教育効果が上がった研究は有名です。しかし、1日起きているのは12時間から15時間程度です。そのうちの何時間もメディアに接することになってしまうと、その他必要な外遊びや人と接する機会が奪われてしまいます。
また、夕食後にスクリーンを見ていると睡眠にも影響が起きることがわかっています。適切でないメディアの使用は、子どもの運動機能、コミュニケーション能力、睡眠の質に影響を与えます。暴力的なコンテンツを見た影響で子どもが暴力的になる傾向があることも言われています。
これからもネットとの付き合い方は変わっていく
今後も急速にIT環境は変化していき、仕事もパソコンに向かう仕事が急激に増えていっています。大人になってからも、ある程度は必要となるのがパソコンスキルやネットとの付き合い方です。もうネットの低年齢化も止められないと感じます。
その中で、あまり効果的ではない2歳までのネット視聴や幼稚園児以降の良いコンテンツを選んでいくことは今後も必要になってくるでしょう。まずはご自身のスマホやネットの利用状況を見直して、より子どもにも良い影響を与えていきたいものですね。
参考:令和5年度 青少年のインターネット利用環境実態調査 調査結果(概要)|こども家庭庁