金なし・職なし・住居なし
旅人だった彼は、祖国のフランスを離れて6年ほど旅を続けていました。一方の私も、昔からよくひとりで海外旅行に出かけることがあります。ニュージーランドで私たちは偶然出会って交際を始めたわけなのですが、遠距離恋愛を経て交際5年目に突入したころ、彼の祖国であるフランスで一緒に住むことが決まりました。
まず彼が先にフランスに戻り、その1年後に私が渡仏したのですが、フランスに引っ越してからの生活はとても大変でした。1年前に祖国に戻っていた彼ですが、まだ職が安定しておらず、お金がなくて住むところもない状況。なんと、私たちの暮らしはキャンピングカーで始まったのです。
キャンピングカーでの生活を楽しめたのは最初の1カ月だけでした。「普通の生活」をしたくてたまらなくなった私たちは、キャンピングカーでの暮らしを続けながら、新しい仕事や住居を必死に探し始めました。
長男の妊娠がわかり…
フランスで暮らす上で、車は必須となります。フランスの運転免許証を取得できていなかった私は、どこへ行くのにも彼の運転が必須です。フランス語がまったくわからないこともあり、フランスに移り住んでからの私は、彼に頼らなければ出かけることすらできません。
そんな状況下で、私がフランスに移住してから2カ月ほど経ったある日、妊娠が判明。「子どもができたことはうれしいけど、今か……」と、職もお金も家すらない私たちはパニックに。とはいえ、子どもができたことは本当に喜ばしいことです。2人で話し合って産む選択をしたのですが、そうなるといろいろな準備が必要になります。
ちょうどそのころ、私はフランスの長期滞在ビザを取得するため、一度日本へ帰国する必要がありました。妊娠がわかって病院に通わなければならない一方で、ビザの手続きもしなければならない……。こうして、フランスに移り住んでおよそ2カ月後、バタバタした生活の中で、私は一時帰国を果たしました。
どん底を経験したからこそ
妊娠初期に日本へ一時帰国し、無事に長期ビザを取得した私は、再び彼の待つフランスへ。しかし、フランスへ戻ったあとも、しばらくはその日暮らしの生活が続きました。
私たちは「生まれてくる子のためにも早く今の状況から脱出したい」と毎日節約し、職を探し、少しでも状況が良くなるよう、努力に励みました。そして、私が渡仏してから約半年が経ったある日、ようやく彼の正社員の雇用が決まり、念願だった家を借りることができたのです!
どん底からのスタートが良い経験となり、フランスに移住して4年目になる今は、お互いに助け合って暮らすことができています。
まるで冒険のような海外での生活をあえて選んだ私。今まで私も各国を旅して苦労は経験しましたが、馴染みのない国に住むとなると、また旅とは違った大変さがあると感じました。
フランスで暮らし始めたばかりのころは、妊娠や長期ビザの取得、引っ越しなどの大きな出来事が重なり、「これからどうしよう」と悩む暇もなく、子どものために環境を整えることでとにかく必死でした。しかし、6年間の旅の経験で培ったであろう「生きていくための能力」を身につけた彼を見ているととても頼もしく感じられ、彼の誠実さや愛情を信じて、私も頑張ることができました。
困難はこの先にもあると思いますが、きっと彼となら乗り越えられると信じています。
著者/岩見エリ
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