「俺は長男なんだぞ」と義父の遺産を全て奪う義兄
義兄夫婦がやってきて、遺産について話をはじめました。義兄が提示した遺産の評価額は1億円。しかも、「俺は長男なんだぞ」と遺産を全てもらうと言ってきました。
義父の介護は全く協力しなかったのに、遺産を全部欲しいと言う義兄夫婦に内心怒りますが、夫は「どうぞご勝手に」と言い始めるではありませんか! 驚く私に夫は目配せをしてきます。これは何か理由があるに違いありません……!
どうやら、夫が遺産を放棄したのは義父の遺志。義兄の性格を熟知していた義父は、義兄が遺産を要求していたら全てを渡すように言っていたのです。さらに、もし折半や全て夫に渡すと言ったら、2人とも相続破棄するようにも言われていました。
そして数カ月後、私たち夫婦の家の前に困り果てた様子の義兄夫婦がやって来ました。
相続税の存在を知らなかった義兄夫婦
話を聞けば、1億円という遺産の評価額は保有している土地と建物の額なのです。すべてを手に入れるためには相続税が必要という事実を義兄夫婦は知らず、1億円の現金が手に入ると思い込んでお金を散財してしまったため困っていました。
「 兄を助けると思って相続税を立て替えてくれ!」
と義兄は悪びれもせず夫に懇願。私は彼らに、相続税を支払えないなら土地や家を売却して税金を支払えばいいのではと助言しました。
この話を聞いて義兄夫婦は安心した様子。「これで安心してまた買い物できるな」と去っていきました。
遺産を相続したはずなのに……!
数カ月後、また困惑した様子の義兄夫婦が私たち夫婦の前に現れました。一生遊べると思って仕事を辞めたのに、家と土地は大した金額にならず、買い物のローンと相続税の支払いに追われているとのこと。彼らは「評価額と売却価格が違うことを知らず、こんな事態になった」と私たち夫婦を責めました。
その後義兄夫婦は離婚し、お金も家もなくした義兄はその日暮らし、義姉はアルバイトに明け暮れ、借金返済に追われているとのこと。
生前は義父を困らせ続けた上に、お金に執着し続けた義兄夫婦。自業自得ですね。
こっそり渡されていた、義父からの感謝の想い
1年が経ち、夫は亡き父から海外旅行をプレゼントされていたことを私に伝えました。実は夫は結婚時から生前贈与を受けており、「父の1周忌が終わったら、2人で海外旅行でもしてきなさい」と話していたとのこと。義父から2人への感謝の気持ちだったのかもしれません。
日ごろの行いの積み重ねで、人生は大きく異なります。義父の愛情やお金に甘え続けた義兄夫婦は、因果応報の結末となりました。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。