病気やケガのときに病院で確認を受ける健康保険証(以下、保険証)ですが、通院の際に、診察代や処方箋を受けたお薬代などの自己負担が3割になることは多くの方が知ってらっしゃると思います。
また、入院や手術などで治療費が多額になったときは“高額療養費制度”で、一定の自己負担を超えると自己負担の一部が払い戻されます。
3割の窓口負担や高額療養費制度は、どの保険証でも対象となりますが、一部の保険証では、さらに上乗せの払い戻しが受けられるものあります。そこで今回は、保険証の確認方法とその上乗せの給付金についてお伝えいたします。
1.保険証の種類を確認しよう
ほとんどの方が健康保険に加入していますが、勤務先やお住まいの市区町村によってお持ちの保険証は個人で異なります。
ご夫婦別々のお仕事をしてらっしゃる場合は、夫婦で保険証が異なることもあります。保険証が異なるという意味は、文末にある保険証の見本やご自身の保険証を確認いただくと、保険証の下の部分にある、保険者名称(健康保険を運営している団体)が異なるということです。
そのなかで、一般的な健康保険である、“全国健康保険協会 〇〇支部”(通称:協会けんぽ)とあるものと、自営業者が中心として加入される、お住まいの市区町村の“国民健康保険”(保険者名称は〇〇市・〇〇区・〇〇町・〇〇村となっています)は、残念ながら通常の保険証なので、上乗せの給付金はありません。
上乗せのある可能性のある保険証は、①業種団体の健康保険証(例:〇〇業保険組合など)、②企業グループの健康保険証(例:〇〇グループ健康保険)、③一部の私立学校・公務員の共済組合証(例:日本私立学校振興・共済事業団、〇〇職員共済組合)などの健康保険組合の保険証です。
該当する場合は、健康保険組合から配布される冊子やインターネットなどで“付加給付”をご確認ください。一部の健康保険組合では、パスワードが必要なものもあります。
健康保険証の見本
”保険者名称 を確認して検索してみましょう”
2.上乗せの給付は付加給付と呼ばれる
健康保険組合のホームページを確認すると、どの保険証にも適用される“法定給付”と健康保険組合独自の“付加給付”と呼ばれる上乗せの給付についての案内があることがほとんどです。
一部の保険組合では、付加給付そのものがないこともあります。ある有名企業グループの健康保険組合のホームページを確認したことがあるのですが、まったく付加給付がないこともありました。
3.付加給付の対象は健康保険組合によって異なる
付加給付という名称であっても一律同じものではなく、健康保険組合ごとに内容は異なります。対象とのなるおもな項目は以下のとおりです。
①高額療養費の自己負担に対する付加給付
高額療養費の自己負担が一定金額を超えると、その分が還付される制度です。自己負担の対象金額は健康保険組合によって異なり、20,000円~50,000円にしているところが多いです。
たとえば、高額療養費制度で本来の医療費の自己負担3割が30万円の場合でも、高額療養費制度で87,340円に減額されるのはどの保険証でも適用されますが、付加給付の自己負担対象金額が30,000円の健康保険組合の場合、さらに57,340円が戻ってくることになります。
②出産育児一時金に対する付加給付
2017年2月現在、出産育児一時金は42万円ですが、付加給付として増額される健康保険組合が一部あります。金額は健康保険組合によって異なります。また、働いているママは対象で、パパに扶養されているママが対象にならないこともあるので、健康保険組合ホームページなどで確認しましょう。
③その他の付加給付の一例
病気やケガで長期間お仕事を休んだときに支給される“傷病手当金”や、産休中で給料がもらえない時期に支給される“出産手当金”、自宅療養で訪問看護にかかる費用を軽減する“訪問看護療養費”などにも、上乗せで付加給付を支給する健康保険組合もあります。
共働きのご夫婦であれば、お子さんや高齢の親御さんに持たせる保険証をご夫婦どちらの扶養にするかのご判断、出産や子育ての費用の準備、民間の医療保険を加入・見直しなど、ご自身の保険証が上乗せされるのかどうかで、備える金額も変わってきます。
なお、転職や退職によって、加入している健康保険も変わることはご注意ください。まずは、ぜひ、ご自身の保険証に上乗せがあるかどうか確認する機会にしていただければと思います。
1級ファイナンシャルプランニング技能士、CFP。独立系FP事務所・株式会社とし生活設計取締役。教育費・老後資金準備、税や社会保障、住宅ローンや保険の見直し、貯蓄・資産運用等、多角的にライフプランの個別相談を行うとともにセミナー講師として活動しています。