パニ子はコールセンターで働く兼業主婦。夫のユウヤと2人で暮らしていたのですが、義母の家が取り壊しになったことをきっかけに、しばらくの間、同居するハメに……。ちょっと気難しい性格の義母が家にやってくるとなると、不安しかありません。
まるで自分の家!? 遠慮のない義母を迎え入れた結果……
「今日から親子水入らずで暮らせるのね~!」
いよいよ同居がスタート。開口一番に息子と暮らせることを喜ぶ義母に、ユウヤもまんざらではありません。義母はパニ子に何の挨拶もないまま、図々しくくつろぎ始めます。
義母は毎日パニ子に命令してばかり。
「嫁は姑の気持ちを察して動くものでしょ! こんな物わかりの悪い嫁じゃユウヤが不憫だわ~。これからは私が指導するから覚悟しなさい!」と高圧的な態度をとります。
住む家がなくなってしまい、ユウヤが大歓迎している以上、そう簡単に姑を追い出すわけにもいきません。しかし、何をしても文句を言われる毎日に、ストレスが溜まる一方です。
我慢の限界に達したパニ子は、ユウヤに相談することにしました。
「母さんの理想とする嫁になってくれれば、それで済む話」
ユウヤは味方してくれるに違いないと思っていたパニ子でしたが、
「母さんはパニ子が立派な嫁になるために、敢えて言いづらいことを言ってくれているんだよ!」と、まったくの見当違いのことを言われてしまいます。
どんなに訴えかけても理解を示さず、
「パニ子が嫁として未熟だってことでしょ? 母さんの教育をイビリだと勘違いするなんて失礼だ」と反論される始末。
しかしパニ子は我慢の限界です。
「文句を言うなら自分でやってください! 私は仕事をしてるんです。働かずに家にいるだけのお義母さんが全部やってくれればいいじゃないですか!」と爆発! 実家に帰ると宣言しました。
「なんて生意気な嫁! 嫁の仕事を放棄するっていうわけね?」激怒する義母に対し、「しばらく実家に帰ってのんびりすればこの家が恋しくなって、戻ってくるだろう」と悠長なユウヤ。
パニ子はその日のうちに荷物をまとめ、家を出て行きました。
「昔のことは水に流して助けてやれよ」
義母とユウヤの振る舞いに愛想を尽かしたパニ子。マザコンすぎる夫のもとに帰るつもりはさらさらありません。実家に帰っている間に離婚を決意し、準備を進めていました。
家を出て一カ月ほど経ったある日、ユウヤから1本の電話が入ります。
「パニ子、そろそろ帰ってきてくれないか? 実は……」
話を聞くと、義母が倒れ要介護になってしまったのだそう。歩くことも話すこともできなくなったと言います。
「パニ子、もう帰って来いって! 今なら母さんも許してくれるだろ」
「何言ってんの?」とパニ子。
ユウヤはこの期に及んでパニ子が悪いと思っているようです。
「だからぁ~、お前が帰って来て、母さんをみるんだよ! 介護は嫁の役目だろ! 過去は水に流せよ!」
もうため息しか出ませんでした。
マザコン夫とそれを育てた義母の転落
義母に甘やかされて育ったユウヤは、家事が一切できません。義母が倒れてからというもの、家の中はぐちゃぐちゃ。外食ばかりであっという間にブクブク太っていました。
お金の管理もできないユウヤは貯蓄もなかったので、義母の介護もすべて自分でやらなければならず、お手上げ状態!
パニ子のほかに頼れる人もなく、ユウヤと義母の生活は堕ちていくしかありません。もちろんユウヤや義母に何の恩も感じていないパニ子は、手を差し伸べる気などありません。
良い機会と思い、離婚を切り出したパニ子。
息子をかわいがり嫁をいびる義母も、義母の味方ばかりして嫁を大切にできない夫にも、もはや用はありません。
自分の都合が悪くなったときにだけ頼ってくる人は、誰からも助けられません。人と人が付き合う上で、大切なのは思いやりだと改めて感じさせられましたね。