「あまりパートとは親しくしないで」
ユミコはスーパーマーケットで社員として働いており、毎日大変ながらもやりがいを感じていました。
ある日、ユミコは前方不注意で商品が入ったワゴンをひっくり返してしまいました。辺りに散らばった商品を拾い集めていると、「大丈夫かい?」「無理をするんじゃないよ」とパートのパニかぁがユミコの手助けをしてくれました。
パニかぁは総菜担当のベテランパート。ユミコよりも勤務歴が長く、いろいろとアドバイスをしてくれる存在でした。
ユミコがパニかぁにお礼を言っていると、後ろから「総菜担当! サボらず働いて!」と厳しい声が。声の主は店長の田中。ユミコはいつもピリピリしていて偉そうな田中のことが苦手でした。
田中に指示されたパニかぁは何も言わず、仕事へと戻っていきました。その様子を見送った田中は「あまりパートさんと親しくしないでちょうだい」とユミコにひと言。
疑問を持ったユミコがどうしてかと聞くと田中は「社員とパートが仲良くなるといろいろ面倒なんだから。社員は社員! パートはパート! そうやって区別するのよ!」と言い、その場を去ってしまいました。
同じお店で働く仲間なのにどうして区別するのか……ユミコには理解できませんでした。
うちの店のお総菜はまずい?
ユミコが働くスーパーマーケットはチェーン店のため、系列の店舗が存在します。ユミコの店は特に総菜がおいしくないと言われており、お客さんからも他の店舗に比べてまずいと評価されていました。
その原因は業務用の冷凍食品やレトルト食品をただ詰め替えているから。設備はチェーン店全体で統一されているため、店舗内で総菜を作ることは可能でした。
パニかぁをはじめとした総菜担当の中には調理師の資格を持っている人もいます。ユミコだけではなく、パートの人たちも店舗で総菜を作ればもっと売り上げが伸びるのではないかと思っていた様子。
しかし、田中は「総菜を自店で作るなんてしたら、管理が面倒じゃないの」「総菜なんて利益率低いんだから、どうだっていいのよ」「どうせ客は味なんてわかんないわよ」と意見を一蹴。
何度言ってもまともに取り合ってくれない田中に対し、ユミコは腹立たしい思い出いっぱいでした。
なんと200人分のオードブルの予約が!
そんな総菜がまずいと言われているユミコの店に、ある日200人分のオードブルの予約が入ったのです!
予約をしてきたのは最近このスーパーマーケットの近くに移転してきた会社の人たち。どうやら移転してきたばかりで、総菜がまずいということを知らないようでした。
200人分のオードブルは大きな売り上げになるため「これで今月の売上目標は楽勝で達成だわ!」と田中はうれしそうな様子。
ユミコはせっかくだからすてきなオードブルを作ろうと思ったようでしたが、田中は「とりあえず食べられるものを詰めときゃいいんだから」と言い、いつものように業務用の食材を使ってオードブルを作るように指示しました。
総菜担当のパートたちにも大口の注文が入ったことを伝え、予約日に備えていたのですが……なんと田中は予約のことをすっかり忘れており、予約当日に業務用の食材の発注をしていなかったことが発覚!
困った様子の田中にお客さんに謝罪することを提案したユミコでしたが田中は「本社にクレームでもつけられたら私の査定が下がっちゃうじゃないの!」と言い、お客さんに謝ろうという考えはまったくないようでした。
いつもの総菜とは大違い!
そんな田中に近寄ったのはパニかぁ。オードブルの材料はどこにあるのか確認しにきたようでした。
発注ミスで材料がないことを知ったパニかぁは大きくため息をついたものの「私に任せな」とひと言。ユミコが驚いていると、青果や生肉、鮮魚担当の人たちを集めるように言われれました。
なんとパニかぁがスーパーの中にある食材をかき集め、総菜担当に指示を出してオードブル用の料理を始めたのです! 3時間後、見事に200人分のオードブルが完成し、予約をしてくれた人たちに引き渡すことができました。
でき上がったオードブルはいつもの総菜より何倍もおいしそうで見た目だけでも食欲をそそられるものでした。ユミコはパニかぁに勧められてエビフライを味見したのですが、あまりのおいしさに目を輝かせていました。
パニかぁは元々、凄腕の板前だったのだそう。それ以外にもパートの中にはフレンチのシェフなど調理のプロがたくさんいたのです。
そのため、急ごしらえでもおいしいオードブルを作ることができたのでした。
ウハウハ気分の店長には…
後日、あのときのオードブルがおいしかったと評判を呼び、次々とオードブルの予約が入るように。さらにパニかぁたちが手作りした総菜を求めるお客さんが増え、総菜コーナーには今までとは段違いにおいしい総菜が並ぶようになりました。
売り上げも上がり、田中はウハウハ気分でしたが……それもつかの間。ド田舎の店舗に飛ばされてしまったのでした。
ユミコは田中が今までこんなにも人気が出るほどの総菜を作ることができるパートの意見を無視して、味がイマイチの総菜を作らせていたことが許せず、本社に報告をしたのです!
今までのおこないが本社の人間に知れ渡り、人事査定が地の底まで下がった田中は降格とともに左遷されたのでした。
その後、ユミコは本社勤務となったのですが、たまにパニかぁの総菜が食べたくなってスーパーマーケットに顔を出すことがあるのだとか。パニかぁの総菜は毎日食べたくなるほどおいしい! とユミコは絶賛していました。
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スーパーマーケットの総菜といえば、忙しい人や料理が苦手な人にとっては強い味方。パニかぁやユミコのようにお客さんの気持ちを考えておいしい総菜を作ってくれている人には、感謝をしなければいけませんね。
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