ピンちゃんはあおいさんに幼少期の話をしたことがあり、その内容は悲惨なものでした。
両親と弟がいる周りから見ればごく一般的な家族ですが、無関心な父と寡黙な弟、心の病でピンちゃんを道連れに死のうとする母……。彼が頼れる人は周囲におらず、強烈なまでの家族への憧れと心の闇を抱えたまま大人になったのがピンちゃんでした。
考えてみたらおかしいことばかり。なぜ今まで気づけなかったのか……
「ピンちゃん仕事してなかったんだって。5年も」
母が彼のこれまでをあおいさん兄弟に告白します。考えてみればおかしいことだらけでしたが、目の前に必死だった母は気づく余裕がありませんでした。
これからどうするの?と問うと、別れるよのひと言。子どもたちの進学にお金がかかる時期に彼を支え切れないと答える母。父と別れてから4人の子どもを育てるため、指紋がなくなるほどの摩擦や腱鞘炎など、整体師の仕事で必死に頑張ってきた母の努力をピンちゃんは踏みにじっていたのでした。
7年にわたるガマンを強いられてきた生活は意外にもあっさりと訪れ……。
◇ ◇ ◇
あおいさんは加害者であると同時に被害者でもある彼のことをあおいさんは嫌いつつも、心の底からは拒絶できませんでした。ですがーー。
「親に恵まれなかったから可哀想」「ひとりぼっちになったら可哀想」
過酷だった彼の家庭環境に同情はしますが、それだけでは彼は変わることができませんし、あおいさん一家にも彼に向き合い続ける余力はありませんでした。ピンちゃんには適切な治療と自分の心に向き合って、健全な心と体を取り戻してほしいですね。