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パパの育児は「できることから始めましょう」それってアリ?行政から配られるチラシにモヤモヤ…

広島県尾道市が同市の妊婦さんに配布したチラシが大きな波紋を呼んだ2023年7月。そこに書かれていたのはパパを対象としたアンケート「産前産後のパパの気持ち」の驚くべき結果でした。しかしその内容に対し、SNS上では「時代錯誤だ」「ママの気持ちをわかっていない」と大きな反響があり、同市は配布を中止することになりました。しかしこの騒動はこれにとどまらず、日本国内の各地に住むママたちから、「うちの市の配布物にも同じようなことが書かれている」という声が上がっています。問題視されているのは、『育児の主は母親である』と取れるような一文。一体どのようなことが書かれているのでしょうかーー。

この記事の監修者
監修者プロファイル

保育士小崎恭弘
大阪教育大学教育学部学校教育教員養成課程家政教育部門(保育学)教授、大阪教育大学附属天王寺小学校校長

兵庫県西宮市初の男性保育士として施設・保育所に12年間勤務。3人の息子が生まれるたびに育児休暇を取得。市役所退職後、神戸常盤大学を経て現職。専門は「保育学」「児童福祉」「子育て支援」「父親支援」。NPOファザーリングジャパン顧問、東京大学発達保育実践政策学センター研究員。テレビ・ラジオ・新聞・雑誌等にて積極的に発信をおこなう。「男の子の本当に響く叱り方・ほめ方」(すばる舎)、「育児父さんの成長日誌」(朝日新聞社)、「パパルール」(合同出版)など、著書多数。NHK Eテレ「すくすく子育て」出演。2022年より「保育」と「育児」分野のYahoo!ニュースオーサーに。
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ことの発端となったのは、広島県尾道市が配布していたという「先輩パパからあなたへ」と書かれた1枚のA4チラシでした。その内容は衝撃的なもので、SNSを介し瞬く間に広がり、今では配布が中止されています。

配布を中止したチラシとは…

尾道市が配布していた「先輩パパからあなたへ」と書かれたチラシには「産前産後のパパの気持ち」と称し、パパ100人を対象としておこなったアンケートの結果が載せられていました。

 

そこには、産前産後の妻に対して嫌だったと感じたこととして「少しのことでイライラしてあたられる」「赤ちゃんの世話で忙しく、家事ができていない」などの、配慮にかける回答が紹介されていたのです。

 

それを皮切りに、どの地域でも同じような文言が書かれたチラシや冊子が配られているという声が上がり、課題視されています。

 

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「できることから始めましょう」そのスタンスで子育てができるのか?

SNSにアップされた各地域の配布物を見ていると、どれも「子育てはママが主体」ととれる内容が書かれており、それに対し「積極的に手伝いをしよう」といった触れ込みでパパの育児参加を促しています。

 

どうやら行政が母子健康手帳(親子手帳)や育児系冊子などを作るときに参考にしている、子ども家庭庁の「母子手帳情報支援サイト」に掲載されている「育児のしおり」にも同じような文言が掲載されているとのことでした。

 

今回多くの人が問題視しているのは以下の一文。


『お父さんも赤ちゃんとスキンシップをしっかりもち、おむつを替えたり、お風呂に入れたり、できることから始めましょう。お母さんがお父さんに赤ちゃんを任せて外出できるようになると、お母さんも助かります。』

 

この『できることから始める』というスタンスに是非が問われているのです。両親ともにできることから始めていたら、子育てはできません。

 

しかしこのような一文が当たり前のように書かれていては、子育ての主はママが担うものと、意図ぜずとも刷り込まれていくように思えてなりません。

 

できないこと・わからないことでも、調べたり人に聞いたりして、できるようにするのが育児なのです。

 

 

「子育ての主体はママ」という考えはなぜこんなに根深いのか?

以前に比べてパパの育児参加が増えているといえど、男性の育休取得率のが女性に比べて圧倒的に低いことや、健診や集団予防接種の会場にいる女性の多さを考えると、まだまだ育児は女性の役割と思われていることが考えられます。

 

なぜここまで「子育ての主体はママ」という考えが根深いのでしょうか。育児の専門家でありパパの育児参加に詳しい、大阪教育大学教育学部教授、小崎恭弘先生に解説いただきました。

 

小崎先生

ここには大きな2つの理由が存在しています。


1つ目は、母親しかできない妊娠、出産と、その後続く「子育て」が、一体として捉えられており、母親の方が子育てが上手くいくと考えられているからです。

特に乳児は「授乳」があり、子育ての初期のタイミングで母親が中心となり、子育てがスタートすることも関係します。


そして2つ目は、高度経済成長期にできた「働く男性・育てる女性」という、固定的な性別役割分業意識が社会的に定着し、現在もその影響を受けている部分があるからです。

特に日本は、そのようなジェンダー規範意識が強い国とされています。


このような2つの考えや価値観が相まって、「子育ての主体は母親である」という、文化が作られているのだと感じます。

理解のないパパに「子育ては母親だけのものではない」と伝えるには?

確かに、妊娠・出産は女性しかできないものですが、以降の育児は父親・母親のどちらかしかできないものはありません。女性しかできないと言われる授乳も、搾乳することで男性でもできるようになるのです。

 

冒頭で述べたように「できることからやればいい」と考える父親に、「子育ては母親だけのものではない」とわかってもらうには、どうしたら良いのでしょうか。

 

小崎先生

「子育ての主体は母親である」という文化の変化、あるいは打破には、一定の時間がかかると思います。それでも確実に男性の育児は、広まり浸透していると思います。

つい先日発表された、男性の育児休業の取得率は、過去最高の17%となりました。女性の82%と比べるとその差は大きいですが、以前はほとんどいなかったことを思うと、大きな進展です。


リアルに社会全体に、父親が育児をする人数や機会を増やしていき、それらを当たり前としていくことが、ゆっくりではありますが、確実なものとなります。

例えば法律で「男性の育児休業義務化」というようにすることも、ひとつの議論としてはあり得ます。しかしあまりに急激な変化や取り組みは、どこかに歪みや軋轢を生み出す可能性もあります。社会は一歩ずつ、ゆっくりと変化していきます。

あゆみはゆっくりでも、一人ひとりの行動が社会を変える

​父親の意識が少しずつ変わりつつあるというものの一方で『父親はできることから始めれば良い』というスタンスが、未だ無意識のうちに広めらていると感じた今回の一件。

 

「子育ての主体はママ」という古い考え方を変えるのは、そう簡単ではないようですが、小さなことの積み重ねが重要になると小崎先生。

 

今、子育て中の人はもちろん、すでに子育てを終えた人、これから子育てをする人など、社会が一丸となって、父親が育児に参加しやすい世の中を作る必要があるように感じます。

 

例えば、育児休暇をとる男性に後ろめたさを感じさせない、子育て中の男性をむやみに飲み会やゴルフに誘わないなども、いち個人ができることのひとつと言えるでしょう。一人ひとりが「父親の育児参加」を意識し、行動することで、未来のパパ・ママの子育てがより良いものになるはずです。

 

育児をする当事者だけでなく、社会全体が「母親だけの育児ではない」という意識を持つことが重要なのです。

 

 

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      妊娠期〜産後(産後も産後何ヶ月までを指すのか個人差があると思う)までに心の動きや身体的な変化も大きく、ホルモンバランスによる影響があること、ただ八つ当たりしてるわけではないししたくてしてるわけでもない… もっと見る
      妊娠期〜産後(産後も産後何ヶ月までを指すのか個人差があると思う)までに心の動きや身体的な変化も大きく、ホルモンバランスによる影響があること、ただ八つ当たりしてるわけではないししたくてしてるわけでもない。イライラの根っこは子育てに対する心配や不安とか不眠からくる生活リズムの崩れから精神も壊れやすい。私自身そうでした。コントロールできないから妊娠・産後うつがあるんでしょう?そういうことを知らない男性が多い(社会の教育面にも問題がある)からこんなことになったのでは...?うちの主人は子育てに協力的でありがたいけど、妻の心<旦那の母(=義母)で今も苦しめられています。
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      ママもパパも子どもからすると同じ親。得意不得意があるのは仕方ないことだけど、父母共に同じ力量で子育てはしないといけたいと思う。ママ主体って、謎すぎる。
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