28歳のパニ子はサラリーマンの夫・アツヤとマンションで暮らす共働き夫婦。結婚して1年足らず、平凡ながら幸せな生活を送っていました。いずれは子どもを作り、一軒家も購入したいと頑張って2人で働いていたのですが……。
突然、自宅に妹が訪ねてきて…
週末、アツヤと2人で家にいるときにインターホンがありました。パニ子はキッチンで洗い物をしていたので、アツヤに出てもらいました。どうやら、インターホンを鳴らしたのはパニ子の実家で両親と暮らしている妹のリンカのよう。
リンカは美容系の専門学校を中退してから、家で毎日ゴロゴロしています。両親もリンカに手を焼いており、どうにか更生させようと働きかけています。パニ子が玄関に目を向けると、アツヤがポケットから財布を取り出し、リンカに一万円札を渡そうとしたのです。
「何やってるのよ、アツヤ!」とパニ子が言うと、「リンカちゃんがお金で困ってるっていうから……」と話します。遊ぶお金が欲しいリンカ。両親からは自分で働いて稼げと言われているようです。パニ子は「あんたにあげるお金なんて一銭もない!帰った帰った!」と強引にドアと鍵を閉めました。そしてアツヤには、リンカに何を言われてもお金を渡さないように念を押しました。
更生したと思ったら、実は…
数週間後の夜。パニ母から「リンカがバイトを始めたとか、聞いてるかい?」と電話がかかってきました。リンカは最近よく出かけているようで、新しいバッグや洋服を購入していると言うのです。ようやく更生の道を歩み始めたと安心したパニ子でした。
それから数日たったアツヤの誕生日。アツヤに内緒で午後休をとり、ご馳走を作ってアツヤを喜ばせようと思っていました。ところが、自宅マンションのエレベーターを降りたとき、「本当に助かる〜ww」とリンカの声が聞こえました。
パニ子は階段に身を潜めて自宅の方を見ると、アツヤらしき人がリンカに一万円札を渡したのです。アツヤは今日定時で帰るって言ってたけど……「ちょっと、何してるのよ!」とパニ子が2人の前に出ていくと、2人とも「…げっ!」といった表情に。パニ子はリンカに働きなさい!うちに来るな!と怒ると、リンカは頬を膨らませつつ、エレベーターに乗り込んでいきました。
リンカが帰った後、アツヤはパニ子に「今のは言い過ぎだぞ!リンカちゃんが可哀想じゃないか」と言うのです。その言葉にパニ子は呆然。ご馳走を作って喜ばせる気満々でしたが、そんな気になれず……。結局、手抜き料理を作って険悪なムードのなか食事をし、「今後うちの家計は私が全部管理するから」と言ってパニ子は就寝しました。
不倫疑惑をかけられてパニック
数週間後。仕事を終えて帰宅するとアツヤが先に帰っており、パニ子に向かって
「友だちから聞いた。お前不倫してるだろ」と言うのです。
まったく身に覚えのない事でパニ子の頭は真っ白。しかし、動かぬ証拠だ!と言って男女が腕を組んで歩いている後ろ姿の画像を見せてきました。
確かに、女性の方はパニ子と同じ髪型で、パニ子が持っている青いワンピースを着ています。しかし、そのワンピースはだいぶ前に購入したもの。偶然写っていた駅の時計塔の時間を見ると、午後5時半を指しています。その時間、パニ子は近所のスーパーで夕食の買い物をしていました。
「私の顔も相手の顔もハッキリ写ってないのに、これが動かぬ証拠!?納得できないわよ!」というパニ子に対し、「と、とぼけるな!責任とって払うもん払え!」と言ってきます。パニ子は免罪を主張しますが、まったく話を聞いてもらえず。これから実家に行くぞ!と興奮気味に言うばかり……。こんなに激怒したアツヤは初めてで、予想外の展開にパニ子も混乱。アツヤと一緒にパニ子の実家へ向かいました。
時計台の時間が運命の分かれ道
パニ子の両親の前でアツヤは、不倫されたと話し始めます。パニ子はスーパーに行っていたと主張。アツヤは両親にスマホの画像を見せました。画像を見たパニ母は「ふぅん…なるほど」と言い、どこかに電話をかけ始めました。電話の相手はご近所さん。片っ端からかけたところ、「卵を2パック購入しているパニ子を見た」「自動ドアが開かなくて困っていた」という情報が。身の潔白が証明されたパニ子。
そこでなんだかアツヤが額に汗を浮かべ始めました。パニ母が「アツヤさん、パニ子が不倫してると言ったその友人を呼んでください」と話すと、アツヤは黙ってしまいました。そこに、妹のリンカが帰ってきました。自分の部屋に行こうとするリンカを引き止め、カバンをつかんだパニ母。
次の瞬間、カバンが床に落ち、ウイッグとパニ子の青いワンピースが飛び出してきたのです。リンカは「やばっ」とつぶやいて石化。パニ母は「最近またゴロゴロし始めたから、変だと思ったんだよ!」と言いました。そこで事態を把握したパニ子。スマホの画像に写っていた女性はリンカでした。「これは一体どういうこと?」とアツヤに問いかけます。どうやら、リンカが自分をのけ者にする家族を懲らしめたい、アツヤしか味方がいないと頼り、2人でパニ子が不倫したという嘘を考えたようです。
開き直ったリンカは、「私とアツヤはそういう関係なの!パニ子はアツヤがいなくてもなんとかなるから、私がアツヤと結婚すれば万事解決だね!」とひとり笑顔に。パニ子はこれまでアツヤの事を優しい人だと思っていましたが、それは違っていたと思い直します。「離婚しましょう!こんな気色悪い男はいらない!でも2人に慰謝料を請求するから!」と話すパニ子。「アツヤ、私の分も払っておいてね」と言うリンカ。そしてパニ子も両親もリンカとは絶縁、アツヤとは離婚しました。
数カ月後、パニ子の実家にボロボロの身なりで土下座をしているアツヤとリンカが訪ねてきました。アツヤが不倫をして離婚し、妹と付き合っているという噂が会社で広まり、仕事を退職することになったそう。そして今はバイト三昧の日々を送っているようです。これまでにされた事を考えると許すことはできず、ドアを開けませんでした。パニ子は働きながら、実家で幸せな日々を送っています。
アツヤは頼られてうれしくなったのかもしれませんが……。本来であれば、妻であるパニ子の事を一番に考えるべきですよね。ありもしない不倫画像をでっちあげてまで、アツヤはリンカと一緒になりたかったのでしょうか。一瞬の気の迷いが、生涯悔やむ事になってしまいましたよね。