突然、浮気を疑われて…
ある夜、仕事から帰宅すると、テーブルの上に離婚届が置かれていました。
「どういうこと?」と聞くと、夫は目も合わせずに言いました。
「友だちから聞いた。お前、浮気してるだろ」
「は? 何それ?」
思わず笑ってしまいましたが、夫は本気の表情でスマホを見せてきました。
そこには、私にそっくりな女性が男性と腕を組んで歩く後ろ姿の写真が。
「いやいや、後ろ姿は似てるけど人違いだって!」と否定しても、夫は「服もバッグも一緒じゃないか」と信じてくれません。
たしかに、背格好や髪型が似ているだけでなく、服やバッグも私が持っているものと同じです。
でも、私はそんなことしていません。
写真データの撮影時間を確認しましたが、その時間、私はひとりでスーパーに行き、夕飯の材料を買っていました。
それを伝えても、夫は「言い訳するな」の一点張り。
まるで、最初から私を責める準備をしていたかのようでした。
「友だちって誰?」妻の勘が働き…
私が「ねえ、その“友だち”って誰?」と尋ねると、夫は一瞬だけ固まり、
「……結婚式にも来てくれた友だちだよ」と答えました。
「名前は?」
そう聞いた瞬間、夫は目を逸らしました。
「相手にもプライバシーがあるし、答えられない。とにかく、早く離婚してくれ……」
夫はそう言い残すと、逃げるように自室へこもってしまいました。
夫の態度に違和感を覚え、その夜、私は眠れませんでした。
――夫は何か隠している。
そんな直感だけが、ずっと胸の奥に残っていました。
夫のパソコンに隠された“証拠フォルダ”
数日後。夫が出張で家を空けている間、私は夫の部屋にあるパソコンを開きました。
そこで目にしたのは、「証拠」と名づけられたフォルダ。
嫌な予感がして開くと、私によく似た女性が知らない男性と歩く写真が何枚も……。
私が見せられた後ろ姿の写真だけでなく、数枚ですが、女性の顔が写っている写真もありました。
その顔を見て、思わず固まってしまった私。
私に扮したその女性は、私も何度か顔を合わせたことがある、夫の職場の後輩女性だったのです。
両親に相談し、夫を問い詰めた結果
私は実家に帰り、両親にすべてを話しました。
母は怒りをこらえながら、夫を家に呼び出しました。
夫が到着すると、早速尋問を始める母。
「うちの娘が浮気をしているって? その話をしていた“友だち”を呼びなさい。はっきりさせましょう」
「……それは……無理です」
「本当にいるの? それとも、あなたが作った話?」
夫は目を伏せ、額に汗を浮かべながら「本当です」とだけ言いました。
けれど、その声には何の力もありません。
「この写真も、友だちが撮ったってこと?」と私が問い詰めると、
夫は視線を泳がせながら、「……そうだよ」とだけ答えました。
明らかに動揺している夫の態度から、やはり嘘をついていると確信しました。
明らかになった“捏造の真実”
写真が撮影された日時、私はひとりでスーパーにいましたが、そのことを証明してくれる人がいます。
実は、母の知人がスーパーで働いており、その日も会計時にあいさつを交わしていたのです。母からも改めて知人に確認してくれて、私の潔白はすぐに証明されました。
その証拠を突きつけた瞬間、みるみる青ざめていく夫の顔。
私は、パソコンのフォルダにあった後輩女性の写真についても指摘しました。
「写真に写っているのは後輩の◯◯さんでしょ? 私になりすまして、捏造したってことだよね?」
長い沈黙のあと、夫は小さくつぶやきました。
「……◯◯と一緒になりたかった。理由を作らないと別れられないと思って」
その言葉を聞いた瞬間、胸の奥の何かが音を立てて崩れました。
まさか、自分が浮気しておきながら、妻の浮気の捏造して、離婚しようとしていたなんて……。
妻の浮気を捏造した夫の末路
夫の言葉を聞いた瞬間、もう何も感じませんでした。
悲しみも怒りも通り越して、ただあきれるばかり。
その後、私は弁護士に相談し、夫とその女性に慰謝料を請求しました。
夫は「悪かった」「やり直したい」と泣きついてきましたが、私の気持ちが変わらないとわかると、最後は静かに離婚を受け入れました。
正式に離婚が成立したとき、ようやく心が静かになりました。
あとから共通の知人に聞いた話によると、元夫は社内不倫の噂が広まり、会社に居づらくなって自主退職をしたとのこと。不倫相手の女性ともすぐに別れたと聞きました。
でももう、そんなことはどうでもいいのです。
私にとって一番大切なのは、「自分を取り戻すこと」でした。
今は実家で両親と暮らしながら、仕事に専念しています。
人を信じることに少し臆病にはなったけれど、あの日、両親が協力してくれたおかげで自分の人生を取り戻すことができました。
誰かに裏切られても、自分まで失わなければまたやり直せる。
そう思えるようになった今、ようやく前を向けています。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。