結婚挨拶のため食事へ
結婚を両親に報告するため、彼を連れて私の両親と食事に行ったときのことです。私たちは高校生のころから付き合っており、両親も彼のことはすでに知っていました。「付き合いも長いし、特に反対もされないだろう」と思いながら、私たちはレストランへ。
しかし、席についてからの雰囲気は予想と違いました。普段は饒舌な父がその日はひと言も話そうとせず、食事にも手を付けようとしないのです。
母や彼が一生懸命話しかけるのですが、父は生返事ばかり。もしかして結婚に反対しているのかと思い、私と彼は困惑してしまいました。
父が黙り込んでしまった理由
少しでも会話が途切れると、気まずい沈黙が。食事の味もわからないまま、空気を変えようと私たちは父の関心を引きそうな話題を探しました。
そして、父の地元に関する話題になったとき、やっと父は自分から話し始めてくれて……。父は地元に愛着が強いようで、おいしいジビエ料理や幼少期の思い出を語り始めました。
後にわかったのですが、このとき父は結婚に反対していたのではなく、初めて会う彼に対して人見知りをしていたようなのです。話し始めてからはいつも通りの父に戻ったので、私たちは内心ホッとしたことを覚えています。
めでたく結婚へ
食事が終わるころには父はいつもの調子を取り戻し、結婚挨拶は円満に終わりました。食事の帰り、無事に結婚の報告ができて安心したと同時に、どっと疲れを感じた私たち。彼は父が話し始めるまで、父に嫌われていると思い、生きた心地がしなかったようです。
その食事会のあと、義両親への挨拶、両家顔合わせも済ませて私たちはめでたく結婚しました。父に入籍の報告をすると「おめでとう」という言葉とともに地元のおいしい食べ物を送ってくれました。
父が黙っていた理由は、結婚に反対していたからではなく、ただの人見知りでした。娘の私ですら今まで知らなかった父の一面を見た瞬間でした。今でも思い出しては、父と「あのときは緊張したね」と思い出話をしています。父は両家顔合わせの日も緊張していたようですが、頑張って義両親と会話していました。最初はどうなることかと思ったものの、無事に結婚できてよかったです。
著者/柏あかり
イラスト/アゲちゃん
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