「私がまだ実家で生活しているから同居を拒んだのかも……?」そんな考えが頭をよぎるも、どうやら違っていたよう。「兄一家を見たら、同居したくない理由がわかる」と言われたのですが……。
叱らない育児で育った姪
ついに引っ越してきた兄一家。久しぶりに再会した兄は、なんだか雰囲気が変わったように感じました。義姉は終始不愛想、姪にいたっては挨拶しても返事をしません。口を開けば、祖母である母に向かって「ジュース持ってこい!」と、乱暴な口のきき方……。かわいい顔が台無しです。
ジュースはないからお茶でいいか? と母が聞くと、姪は急にご機嫌ナナメになって大暴れ! その上義姉は「孫が来るとわかっていて、ジュースも用意していないんですか!?」と耳を疑うようなことを言うのです。兄はというと、怒ることもせずにただ見ているだけでした。
たまらず母が叱ると、義姉は「お義母さんやめてください! そんな言い方したらかわいそうじゃないですか!」と反論します。そのまま嵐のように兄一家は去っていきました。
母に話を聞くと、義姉は「叱らない育児」を実践中で、姪が何をしてもニコニコ見ているのだそう。赤ちゃんのころはそれでもなんとかなっていましたが、成長するにつれて姪のわがままはエスカレート! 耐えきれず両親が口出しをしたところ、義姉に逆ギレされたと言います。同居を断ったのは、こんな理由があったからでした。
兄家族と絶縁
ある日仕事から帰ると、兄一家が遊びに来ているのか、家の中からドタバタと大きな物音が聞こえました。
リビングに行くと、なんと姪が母の作った料理をめちゃくちゃにしていました。食べ物を粗末にしてはいけないと叱る母に対して、義姉は粗末にされたくなかったら姪が好きなものを作ったらいいだけだと反論しています。大暴れする姪は、ついに手に持っていた箸を投げてきて、危うく母に当たるところでした。さすがにこれはやりすぎだと思い、私も口を挟まずにはいられません。
注意された姪はムッとして「うるさい! いきおくれ!!」と暴言を吐きます。そんな言葉、まだ幼い姪が知っているわけがありません。義姉が家で言っているのでしょう。
姪の大暴れは止まらず、コップや皿を投げて粉々に……。私はもう黙っていられず、姪を叱りました。すると「ウチの天使を叱らないで!」と義姉に逆ギレされる始末。私は呆れて、もう関わる気がなくなってしまいました。
その後、何度か義姉と姪が訪ねてきたようですが、母は断固拒否して放置することにしたようです。しかし兄は時々実家を訪ね、「娘の面倒を見てくれないか?」「やっぱり叱らない育児は間違っていたかも」と母にこぼしていたのです。
変わり果てた兄がやってきた
3年後ーー。
実家でいつものようにくつろいでいると、インターホンが連打され、同時に玄関のドアをたたく音が響きました。母は何か悟ったように「お出ましのようだねw」と笑みを浮かべています。
玄関を開けると、やつれて傷だらけの兄と、その腕の中で大暴れする姪の姿がありました。話を聞くと、わがまま放題で友だちにも悪影響を与えるため保育園は退園、小学校に上がっても保護者や先生からの電話が鳴りやまないよう。近所からのクレームも酷く、もう5回も引っ越ししているそうです。兄は何度も義姉に躾の方法を考えようと提案したようですが、叱らない育児の方針を変えようとせず、挙句の果てに家から出て行ってしまったとのことでした。
「どうか俺と娘を救ってほしい」と兄に頭を下げられた母。無知な親のせいで孫が生きづらい人生を送るハメになっては可哀想だと思い、ビシバシ躾け直すことを条件に、協力することになりました。
そんな経緯で、兄と姪は実家に戻り、私たちと一緒に住み始めたのです。
子育てに必要なのは…
姪との同居は、予想していたとおり壮絶でした。それでも根気よく向き合い、たくさんの愛情を与えることで、だんだんと姪は成長し、学校や近所からのクレームがついにゼロになりました。
そうして、平穏な生活を取り戻してから半年後……。突然、義姉が「私の天使ちゃんはどこ?!」とやってました。あまりに帰ってこない義姉を心配して調査会社に依頼していた兄によると、義姉には前々から不倫相手がいて、その家に滞在していたようです。おそらくお金が尽きて、養育費目当てにやってきたのでしょう。
兄は離婚するつもりで話を進めていたので、追い返そうとしましたが、それより先に口を開いたのは姪でした。
「私はママのところになんて帰らない! おばあちゃんもパパも怒ると怖いけど、それは私のために言ってくれているんだってわかったの! 悪いことしたらゴメンナサイだよ。どこに行こうと勝手だけど、こんなに長い間家族を放ってどこかに行っていたこと、ちゃんと謝ってくれる?」
見違えるような成長に、私も母も感動してしまいました!
その後、兄は離婚し、姪は母と兄で育てています。離婚に向けて散々話し合いをした兄夫婦でしたが、義姉は『叱るのは本人のため』だということに最後まで納得しなかったそうです。
ただかわいがることは誰でもできますが、それだけでは足りません。ダメなことはダメだと教え、時には愛を持って叱ることが大切なのですね。