高級食材しか認めない義母
ある日の夕食時、義母が我が家にいきなりやってきました。そして、私が作っていた料理を見て開口一番、「またそんな安っぽい材料使って」といい出したのです。
義母は「高い食材=おいしい料理」と思い込んでいるタイプ。私が節約しながらも工夫して、家族のために毎日ごはんを作っていることには一切目を向けてくれません。
「スーパーの特売品なんかやめて、もっとちゃんとしたもの使いなさいよ。娘ちゃんにも良くないわよ」
そんなふうに言われても、わが家にはわが家のやりくりがあるし、娘の将来のためにもしっかり貯金していきたい。私は安い食材でもおいしく作れるよう、日々工夫しているつもりです。
でも、義母はその価値観がどうしても理解できないようでした。
娘の楽しみにしていたお弁当が…
事件が起きたのは、娘の小学校の運動会の日。私は朝4時に起きて、家族みんなで楽しめるようにと、心を込めてお弁当を用意しました。娘も「ママのお弁当楽しみ!」と笑顔で出かけていき、私もうれしい気持ちに。
その後、夫と、わが家へ立ち寄った義両親とともに学校へ行き、午前中の競技を応援して過ごしました。そして昼食の時間になり、お弁当を出そうとしたそのとき――。
義母が、見たことのない立派な重箱を鞄から取り出したのです。
「え? どういうこと? 私の用意したお弁当じゃない……」
私が混乱していると、義母は重箱の蓋を開けながら平然とこう言いました。
「あなたの作ったお弁当は貧乏くさいから、置いてきたわ。せっかくだから、有名料亭のお弁当を取り寄せたの」
頭が真っ白になりました。早朝から手間ひまかけて作ったお弁当が、勝手にすり替えられていたなんて……。
娘と夫が義母に物申す!さらに義父も…
義母は満足そうに取り寄せ弁当を並べていましたが、娘の表情は見る見る曇っていきました。
「え? ママのお弁当、ないの? 食べたかったのに……こんなのイヤだ! ばあば、ひどいよ!」
娘の涙に、私も胸が締めつけられました。すると夫が険しい表情で義母に言いました。
「勝手に捨てるなんて、ありえないだろ! ママの手作り弁当を家族みんなが楽しみにしてたんだぞ?」
義母の取り寄せ弁当は豪華であっても、大人が好むような高級食材ばかり。私が用意していたお弁当は、娘の好きなものばかりを詰めた特別なものだったので、娘にとっては代わりがきかなかったのでしょう。
そして、普段あまり口出ししない義父までが、義母に向かって言いました。
「いいかげんにしろ。人の気持ちを踏みにじるな」
義母は一瞬驚いたような顔をしましたが、やがて視線を落とし、小さく「ごめんなさい」とつぶやきました。そのあとは何も言わず、気まずそうにその場に座りました。
「高級」だけが価値ではない!
すると突然、義父が立ち上がり、少し戸惑いながら言いました。
「……実はな、朝、お弁当が置きっぱなしになっていたから、うっかり忘れたのかと思って、車に積んでおいたんだ。『お弁当を忘れた!』と焦っているところで、お弁当を出して安心させようと思ってさ」
そこで少し言葉を詰まらせたあと、義母を一瞥して、ぽつりとつぶやきました。
「まさか、わざと置いてきたなんてな……」
そう言って、義父は持参していたクーラーボックスから、私が用意していたお弁当を取り出したのです。
娘は目を輝かせて「やったー!」と笑顔になり、私もほっと胸をなでおろしました。
私たちはそのお弁当を囲んで、家族でようやく楽しい昼食の時間を過ごすことができたのでした。
その後、義母は以前より少しだけ口出しを控えるようになりました。あの日、娘の涙と、家族の反応を見て、少しは考え直してくれたのかもしれません。
高くて豪華なものが一番いいとは限らない。たとえ安くても、家族のことを思って作ったごはんには、ちゃんと意味がある。あの日、私はそれを改めて感じました。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。