社長の後を継いだのは…
私は中卒で社会に出てから十数年、ずっと同じ会社で営業職として働いています。家族経営の小さな会社ではありましたが、先代社長は社員をよく見てくれる人で、学歴よりも「努力する姿勢」を評価してくれました。社長の長女・A子さんも温かい性格で、社員にとって頼れる存在でした。
そんな中、ある日突然、社長が不慮の事故で亡くなられました。社内は深い悲しみに包まれましたが、経営は止まるわけにいきません。後任には長女のA子さんではなく、次女のB美さんが就任することになりました。
新社長の独善的な経営方針
しかし就任直後から、B美社長のやり方に社員たちは戸惑いました。取引先との約束を軽んじたり、突然方針を変えたりと、現場の混乱が続いたのです。社員の意見に耳を傾ける姿勢もなく、厳しい指示を繰り返すばかり。
特に彼女は学歴にこだわる傾向が強く、会議の場で出身校を聞かれたとき、私は正直に「中卒です」と答えました。その瞬間、場の空気がピリッと張り詰めました。
B美社長は驚いたように私を見て、「そうなの? もっと学歴がある人だと思ってた」と口にしました。悪意があったわけではないのかもしれませんが、その言葉に私は小さくショックを受けました。
しかし他の同僚たちは、「彼女の実績は社内でもトップクラスです」「むしろ彼女の努力を見習いたい」とフォローしてくれました。その場はなんとか収まりましたが、社長の表情は険しいままでした。
「明日から来なくていい」と言われた日
数日後の朝、B美社長が営業部にやってきて、突然私に向かってこう言いました。
「あなた、もう明日から来なくていいわ。今後は別の人に任せるから」
突然の通告に言葉を失いました。理由を尋ねても「方針変更だから」の一点張り。納得できない気持ちはありましたが、静かに「承知しました」とだけ伝え、その場を離れました。
すると、そのやりとりを見ていた同僚たちが次々と声を上げました。
「こんなやり方は納得できません」「僕も退職します」
次々に退職届が差し出され、職場は一気にざわつきました。
社員たちの決断とその後
実はそのころ、先代社長の長女・A子さんが新しい会社を立ち上げており、希望者を受け入れる準備をしてくれていたのです。私を含む複数の社員がそちらへ移籍し、再スタートを切りました。
一方で、B美社長の会社は主要取引先からの信頼を失い、経営が厳しくなったと聞きました。ある日、私のもとにも「戻ってきてくれないか」との連絡がありましたが、丁重にお断りしました。働く人を大切にできない会社では、長くは続かないと感じたからです。
数カ月後、A子さんの会社がB美社長の会社を引き継ぐ形になりました。A子さんは社員の意見を尊重し、透明性のある経営を心がけています。私も営業リーダーとして再びチームをまとめる立場に戻り、やりがいを持って働いています。
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学歴や肩書よりも、誠実に働く人を正しく評価してくれる環境こそが、会社を支える力になるのかもしれません。新しい社長のもとで、また皆で力を合わせて頑張っていってほしいですね。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
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