夫の地元への引越しと聞くと、一番に想像するのが義実家との関係性。でも私と義母の関係は良好でした。問題なのは義父なのです……。
嫁を見下す義父
週に2日ほど、家事や仕事を終えた夕方にお茶を楽しんでいた私と義母。しかし義父は、そんな暇があるなら障子の張り替えや土間の水拭きをしろと文句ばかり。でも私から見ると義母の家事は完璧で、義父が言いがかりをつけているだけだと感じてしまいます。
義父の私への態度も同じで、在宅の仕事が理解できないのか、いつも家にいて怠けていると言われる日々。パソコンは娯楽と思っているのか、そんな暇があるなら家事をしろと言ってきます。
義父は『嫁』は夫よりも下と考えていて、完全に見下しているのです。
さらに、地元への引っ越しによって気づいてしまったのが、夫が義父に憧れを抱いているということ。夫はどんどん義父に感化され、嫁の私を虐げるようになりました。言動や行動までそっくりになってきたのです。
義父に感化された夫
あるとき、義母が階段から落ちて足を骨折し、1カ月の入院が決まりました。びっくりして病院に駆けつけると、思いの外元気そうな義母にひと安心。しかし階段から落ちたときも義父は見ているだけだったそう。義母が自分で救急車を呼んだと聞いて、ますます義父への不信感が募ります。
その上義父は、義母の骨折よりも入院中の自分の生活を心配するばかり。「俺の食事や風呂の支度は誰がするんだ」と言い出したときには嫌な予感がしていたのですが、夫はここぞとばかりに私にやらせるから大丈夫だと言ったのです。
義父も満足げに「この際、この家に置いてやるから家事をやれ」と命令してきましたが、私には仕事があります。多少のサポートはしてあげようと思っていましたが、ここまで命令されたらそんな気持ちも消え去ります。
病院からの帰り道。夫に「義父の分の家事をする余裕はないし、仕事があるから実家に泊まることはできない」と抗議するも、夫は譲りません。
いかに義父が偉大かをつらつらと述べ「女はちょっとでも優しくするとすぐに調子に乗る」と悪態をつく始末。こんな人ではなかったのに、完全に義父の影響を受け、気持ちが大きくなっているのがわかります。
離婚を決意した女たち
離婚を決心したのはこのときです。しかし心配なのは義母のこと。私は病院に向かい、義母に離婚を打ち明けることにしました。
義母にはすべてお見通しだったよう。義父や夫から言われたことを一言一句当てられてびっくりしました。「今日は離婚の報告?」といわれてドキッとした私。意を決して打ち明けようとしたところ「実は私も離婚するって決めてるの」と聞かされて驚きが隠せませんでした。
義母はもう何年も離婚を考えていたよう。友だちや親戚付き合いもなく家事もできない、家にいることしかできない義父が定年になり、ますます孤独になるタイミングを狙っていたのでした。
これは女2人、力を合わせるしかありません。私と義母は綿密な離婚計画を立て始めました。
離婚届の出所は?
義母が退院する日、なかなか家に帰って来ずイライラした義父から1本の電話が入ります。しかし義母は「もうあなたとは夫婦じゃないので電話して来ないで」と一蹴。すると今度は私のスマホに夫から着信が入りました。
「義母が帰ってこないというので実家に行って家事をしろ」というもの。もちろん私も言うことは同じ「もう私たち夫婦じゃないから電話して来ないでね!」
義母は以前、酔っぱらった義父からサイン済みの離婚届を叩きつけられたことがあったそう。それを大切に保管し、時が来るのを待っていたのでした。
私はというと、義父に感化された夫に同じことをされたことがあり、同じくサイン済みの離婚届を渡されたことがあったので、それを探し出して提出しました。
その後、引っ越しの準備をする私たちの横でいつまでも文句を言い続ける義父と夫でしたが、ついに事態の大きさに気づいたのか謝罪の言葉を口にしました。しかし「謝って済む時期はもうとうに過ぎてしまった」と義母。私たちは何もできない男たちを残し、新たな生活を歩み始めたのでした。
失うまで大切さに気づかなかったとは、なんとも愚かな話ですね。夫婦関係に上下はないはずです。幸せな老後を過ごすためにも、互いを尊重し、感謝を伝えることを忘れないようにしたいですね。