その後、その場を逃げるように立ち去ると、夫に遭遇しました。ついに心の限界が来てしまった翔子は「ただ子どもが欲しいと願ってるだけなのに、なんで私には叶わないの!?」と泣きながら訴えたのでした。翔子の悲痛な叫びを聞いた夫は2人で話し合い、不妊治療は一旦休むこと決意。病院の先生に伝えると、あっさりと了承してくれました。
病院を出ると、草陰で座り込む1人の女性、淡路さんを発見した翔子。一緒に座って話を聞くと、淡路さんも不妊治療で悩んでいました。話しているうちに“友だちになりたい”という気持ちが芽生えた翔子は、連絡先を交換することに。
翌日、淡路さんに誘われて岩盤浴に行きました。そのとき、翔子が不妊治療のことを相談すると、「旦那さんの精子を一度検査をしてもらったほうがいい」という話になりました。淡路さんに相談したことで、“一度夫と話し合ったほうがいいかも……”と思った翔子でしたが、なかなか言い出すことができず……。
その日の夜、夫に誘われて久しぶりに妊活抜きの夜の営みをおこないました。行為が終わり2人で抱き合っていると、夫から「専門の病院で精液検査をしてもらいたい」と告げられたのでした。
還暦を迎える部長がパパに! 詳しく話を聞いてみると…
©森脇葵/ビーグリー
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※日本産婦人科学会によると、男性側に理由がある割合と、女性側に理由がある割合はほぼ半々だと言われています。
©森脇葵/ビーグリー
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“もしかしたら、不妊治療に対してそこまで真剣に
考えていなかったのかもしれない”と思い始めた夫。
この日、会社に行くと、
もうすぐ還暦を迎えるという部長が来年パパになるという話を耳にしました。
同僚とその話をしていると、
夫と目が合った部長が近づいてきました。
「あの……おめでとうございます。
楽しみですね」
「あーいや……ははは……ありがとう。
嫁にどうしてもとせがまれてね」
「いいなー。やっぱアレっすか。
若い嫁さんだと自分も若くなったりするもんすかねー」
「ははは。だったらよかったんだけどなー」
「まぁいわゆる試験管ベビーってやつよ」
「詳しく知りたかったら個別に教えてやるぞ」
そう言うと、その場を立ち去って行きました。
その後、別の社員に話しかけられた夫。
健康診断の話について軽く話すと、言葉の節から
“みんなそれぞれ事情があるのではないか?”と感じたのでした。
お昼の時間になると、朝の話が気になった夫は、
部長の隣に行ってごはんを食べることに。
「あの……部長のところ、
人工授精か体外受精をしたってことですか」
「ん? あ、子どものこと?
何? 興味あんの?」
そう聞かれると、
夫は治療をおこなっていたことを話し始めました。
「でもなかなかできなくて少し休もうかってなってて……。
なんていうか男の俺にできることなんて
何もなくて歯がゆいです」
「いやいやいや、
お前にできることいっぱいあるだろ」
部長はそう言うと、
男性ができる具体的なサポート例をいくつか挙げました。
さらに、夫に対して精液検査が済んでいるかを尋ねてきたのです。
「あ、それは婦人科で妻と一緒にやりました。
問題なかったと聞いてます……」
「はい。ブッブー。アウト―。
なんで妻から聞いてんの? 俺が聞いてんのは
自分で行ったのかってことですー」
「産婦人科じゃなくて泌尿器科メンズへルース」
「泌尿……? それは行ってないです」
「なぜ!? WHY!?」
「妻はあなたは行かなくても大丈夫じゃないって……。
仕事も忙しくて休めないし」
「嫁さんも仕事してんだろ?
忙しいのは一緒じゃないの?」
「忙しいのを理由にしてるだけで、
自分には必要ないと思ってるんじゃないの?」
厳しい部長の言葉にハッとすると、これまで何1つ
祥子をサポートできていなかったことに気付いた夫。
また、部長との会話から、
男性が不妊の原因の場合もあるということを知ると、
その日の夜、男性不妊の原因についてを調べ始めたのでした。
精液検査は産婦人科でも受けられますが、精液検査のみになります。一方で泌尿器科では、精巣(睾丸)の状態を調べる詳しい検査や、必要に応じてホルモンの状態を調べる検査など、より詳しい検査を受けることが可能です。そのため、最初から泌尿器科で精液検査を受けるほうが、精液に問題があった場合の再検査などを省略することができます。子どもを望んでいる男性であれば、一度は泌尿器科で検査を受けてみるといいでしょう。
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監修/助産師 松田玲子