ある日、ずいぶん前に貸した喪服を返しにきた義姉。私の知らない間に家にあがっていたようで、キッチンにあったその日の夕食用として作っていたパクチー入りのシュウマイを、つまみ食いしたよう。そこまでならまだ許せますが「おいしかったから」といって、自分の家の夕飯用にほとんど持って帰ってしまいました。その日をきっかけに、義姉はおかずができる時間を狙ってくるようになって……。
ほぼ毎日来てませんか?
「今ご在宅? 近くにいるから家に寄ってもいい?」
義姉からの連絡はいつも突然。そして、決まって夕食のおかずを作り終えるころ……。この日も夕食のメニューは何かと聞かれ、「五目焼きそばとサラダ」と答えると、「おいしそう~」と持って行く気満々でした。
義姉の場合、おすそ分けというレベルではなく、私たち夫婦が食べる分がなくなってしまうほど、ごっそり持っていってしまうのです。義姉は「持って行かれるのを見越して作ればいい」と簡単に言いますが、それだと食費がかかります。すこしくらい負担してくれてもいいと思ってしまうのですが……。
でも、その話をすると「ケチ」と言われて終わり。私は諦めて好きなだけ持って行ってもらうことにしました。すると、義姉は「白ワインに合うおつまみとサラダにしてほしい」と、リクエストまでするように……。レシピならネットで検索すればいくらでも出てくるので、自分で作るように伝えたのですが、「よく分からないからとにかく作って」と押し切られてしまいました。
義姉が料理好き?!
義姉のおねだりから1週間ほど経ったころ、兄から久しぶりに連絡がありました。
お互いの近況報告をしていると、聞き捨てならない言葉が聞こえてきます。
「嫁の作る飯がうまいからさ~w」
「お義姉さんが?」と聞き返す私に、兄は義姉が料理の画像を投稿しているSNSもやっていて、フォロワーもいっぱいいるんだと自慢してきました。嫌な予感がした私。たとえばどんな料理を作っているのか聞いてみると、やっぱり私の家から強奪しているメニューと同じでした。自分の嫁が料理上手だと信じて疑わない兄の自慢話は、その後もしばらく続き……。
「うちの嫁の料理を見習ったらどうだ?w」
ここまで言われて、さすがに私も黙っていられなくなりました。
「うちから料理を取っていく所とか?」
「は? どういう事だ?」
私は兄に洗いざらい話し、義姉のせいで食費も倍近くに膨れ上がっていると伝えました。そして、決して義姉は料理上手ではないということも……。当然ですが、兄は信じられないといった反応。
それなら、ちょうど来月親戚が集まる機会があるので、そこで義姉に料理を作ってもらえばいいという話になって……。
大恥をかいた兄夫婦
1カ月後。
約束どおり親戚が集まる前で料理をすることになった義姉。私は予想できていましたが、ヘドロのような料理が完成し、みんなビックリ……。料理上手な嫁を自慢していた兄と義姉は、大恥をかいてしまいました。義姉は私が作ったおかずを強奪する前は、惣菜を並べていたそうなんです。
その後、義姉と兄は見栄っ張りだの、気持ち悪いハゲだの、料理とは関係のないことまで持ちだして醜い言い争いがはじまり、とうとう離婚話にまで発展してしまいました。
決して心が広いとは言えない兄は、義姉のことをどうしても許せなかったようですが、1人で生きていく自信がない義姉が離婚を拒んだため、もめ続けているそう。
一方の私は、料理を振舞い親族から大好評を得ました。さらに私から「料理を習いたい」と言ってくれる人まで。誰かのために心を込めて作った料理を、喜んで食べてもらえるのは、本当に幸せです。
◇ ◇ ◇
素敵な奥さんに見られたいという気持ちから、他人の家のおかずを奪い取っていた義姉。妻さんに料理の作り方を教えて欲しいと言っていれば、こんなことにはならなかったのではないでしょうか。過剰な見栄は、自分を滅ぼしかねませんね。また、今回の出来事で妻さんの料理のうまさを知ってもらえることになりました。料理を喜んで食べてもらうことに幸せを感じる妻さんにとって、とてもうれしかったのではないでしょうか。妻さんにはこれからも大好きな料理を楽しんでほしいですね。