その日、私は夕食のメニューを義母に相談していました。
「夜にトンカツはちょっと……。若い人たちはいいのかもしれないけど、私には重くて……」
「あっさりしたものが良いとは言ったけれど、夕飯に冷麺はないんじゃないかしら?」
「お寿司もいいけれど、すぐ出前を頼むのはどうかと思うわよ」
私が提案するメニューはすべて、義母に遠回しに反対されてしまいます。はっきり悪口を言われているわけではないので、私も言い返すことはできませんでした。
別に責めてるわけじゃないのよ?
私が「すみません……」と謝ると、「別に責めてるわけじゃないのよ?」「あなたには本当に感謝しているの、新婚なのに私と同居してくれて」と私をフォローしてくれる義母。
しかし、すぐさま義母は「ただね、ちょーっとだけ物覚えが悪いわよね?」と私の至らない点を指摘してきました。
「私に言われたことはきちんとメモをとって、確認するようにした方が良いと思うの」「仕事の時だってメモとるでしょ?あなた、メモを一切取らないからやる気がないのかと思っていたわ」「姑の言うことなんてうるさいわよね、いやいやながら聞いているのかしらって」
義母の指摘に、私は平謝り。その頃はまだ、義母が私に嫁としての心得を教えてくれていると思い込んでいたのです……。
エスカレートする義母の言動
3カ月後――。
今日は私の誕生日で、夫とディナーに出かけ、ちょっといいホテルに泊まる予定です。うきうきしながら夫と歩く私に、義母から「あなた誕生日だからって家事をサボってもいいと思ったの?」とメッセージが届きました。
昨晩、できる洗濯物はすべて終わらせておいた私。しかし、義母は乾燥機で洗濯物を乾かしたことが不満な様子。
「私の洗濯物はお日様でちゃんと乾かしてほしいってお願いしたじゃない!」と言われたので、「お義母さんの洗濯物は言われた通り外干しする予定なので、明日帰ってからすぐに洗濯しますね」「今日はホテルに泊まるので私は洗濯物を取り込めないですし、そんなに量もなかったので、明日で大丈夫かと思っていました」と返しました。
「私の洗濯物は後回しでいいって思ってたのね?」「洗濯物を取り込むくらい、私に頼めばよかったでしょ!」
最近、義母は私をフォローすることもすっかりなくなり、責め立てるようになっていました。
「本当に頭の足らない人ね、やっぱりあなたなんかと結婚させるんじゃなかったわ」「これじゃ将来生まれてくる孫も期待できなさそうね」「伝えたことの半分もまだできていない、役立たずな嫁がいつまでも家にいられると思わないでね」
思わず眉をひそめてしまった私。隣にいた夫が「どうしたの?」と言って、画面をのぞき込んできました。義母とのやり取りを見て、夫もあ然。そのまま義母に電話をかけて、「嫁いびりするな!」と一喝してくれたのです。
追い出すと言うのなら
数週間後――。
私の誕生日が終わってから数日間、夫は義母の行動に目を光らせてくれていました。しかし、最近は義母には怒っていない様子。夫が私の肩をもう持たないと思ったのか、義母は再び私をいびってくるようになったのです。
「息子に怒ってないのか聞いたら『興味がない』って言ってたわ」「あなたとうとう愛想つかされちゃったわね」「これからは絶対に私の言うことをすべて聞いてもらうからね。使い物にならないならすぐに出て行ってもらいます」
最初のうちは良い嫁になるため、と義母に大人しく従っていた私ですが、虐げられるのは絶対に嫌。「もうお義母さんの嫁指導にはついていけません」「私、明日から最低限の家事しかしませんから、お義母さんは自分で自分の分をやってくださいね」と言い返しました。
「息子という後ろ盾がなくなったから、今度は強気な態度に出るわけ?」「思った通り、本性は卑しいのね」と私を嘲笑う義母。「私に口ごたえしたらどうなるか、思い知らせてあげるわ」と嫌な笑みを浮かべていました。
数日後――。
「あなた今どこにいるの?」「嫁が家を空けるならちゃんと行き先を伝えていくものでしょう?」「私のお昼ごはんも作らないで外出するなんて……」と義母からメッセージが。この数日間、私が義母を完全に無視していたので、相当ストレスがたまっているようです。
「あんた何日家事をサボる気?」
「私の言うことが聞けないなら、本気で追い出すわよ」
「え?もう引っ越しして出て行きましたよ?」
義母に気付かれないように、深夜や早朝にこっそり自分たちの荷物だけを運び出していた私たち。今朝、ようやく最後の荷物を運び出し、晴れて新居での生活をスタートしたのです。
注意しても聞く耳を持たない義母に、夫は怒りを通り越して呆れ果てていました。なにを言っても無駄だと感じた夫は、すぐに新居探しに奔走。一方、私は引っ越しの準備を着々と進めていたのです。
私たちが使っていた部屋がもぬけの殻であることに気付いたのでしょうか。義母は「私はね、本当にあなたに良いお嫁さんになってほしくて厳しくしていたの」「意地悪でしていたわけではなくてね……?」と見事なまでの手のひら返し。
家事をすべて押し付けてきていたのに、今さらどの口が言うのでしょうか……。掃除が終わったと思ったら、コーヒーを床にぶちまけられたこともありました。
「うちの味を全然覚えてくれない!」と言って、何度も料理を作り直させられたり……。「母さんの味付けは濃すぎて食べられたもんじゃない」と夫が言っていたので、私は本のレシピ通りに作っていただけなのですが。
また、何度も私のことを「高卒」と言って馬鹿にしてきた義母。これも夫から教えてもらったのですが、義母も私と同じく高卒なのだそう。なぜ見下してくるのか、私にはさっぱりわかりません。
「謝りに行くから、今どこにいるか教えて?」「息子に連絡してもつながらないの……」と義母。夫は私よりも早く、義母の連絡先をブロックしていたようです。
そもそも義母から頼み込まれたから、同居に同意したのです。新婚の私たちは本当は夫婦水入らずで過ごしたかったのです。そして今回、さんざん「出て行け」と言われたので、その通りにしたまで……。
その後――。
私は新居で夫と2人、毎日楽しく暮らしています。今思えば、義母に認められたいからと我慢しすぎていたように思います。もっと自分の意見を言うべきでした。これからは大切な夫を支えながら、幸せな家庭を築いていこうと思います。