一時停止したのに…
父の容態が心配で、搬送先の病院へすぐに出発した私。愛車に乗って最速で移動します。とはいっても、もちろん法定速度や交通ルールは遵守していました。
ナビに従って、普段は通らない交差点に差し掛かったとき。大きい道に出る際に一時停止標識があったので、私は一旦止まって左右確認をし、再び進もうとしたのですが……。
突然目の前に人影が飛び出してきました。急停車してよく見てみると、その人は警官の制服を着ていたのです。そしてこちらに近付いてきて、運転席の窓をコンコンとノック。私が窓を開けると、ニヤリと笑ってこう言いました。
「今、一時停止しなかったよね? 左右確認も怠った。俺はやさしいから、罰金50万を払えば見逃してあげるよ」
言いがかり→脅迫?
私はもちろん、一時停止も左右確認もしっかりしたと告げました。しかし彼は聞く耳を持たず、免許証を見せろと続けるのです。違反事項は何もしていないと拒否し、父の病院へ急いでいることを説明すると、「公務執行妨害で逮捕してもいいの?」とまるで脅迫まがいのセリフまで。
私は仕方なく免許証を渡しました。すると警官は、スマホを取り出し写真を撮ったのです。驚き過ぎて言葉が出ない私に、さらに追い討ちをかけてきました。
「点数引かれたくないなら、俺に50万ね。高そうな指輪をしているんだから、どうせ金持ちでしょ」と言うのです。
運転者がお金持ちかどうかは関係ないですし、何より私は無実。しかも、正規の罰金ならまだしも、見逃してもらうために警官に金銭を支払わなければいけないなど、まったくもって意味がわかりません。
調子に乗る横暴警官
正直、一刻も早く父の病院へ行きたかった私は、もめ事にはしたくなくて考え込んでしまいました。
するとこの男、「警察官の俺が検挙したんだ。払うと約束するまで免許証は返せないよ?」と調子に乗りだしました。さすがにこれはやり過ぎでは? この慣れた感じだと、絶対他にも被害者がいそうです。
とそのとき、私をうまく丸め込めたと思ったのか、彼はなんと、自分の口座情報を書いたメモを渡してきたのです。
「はいこれ、俺の振込先口座」
自ら本名を明かしてきた横暴警官を前に、これは逆襲のチャンスだと私は口火を切りました。
逆襲開始!
「へぇ……名字はタナカさん。あなた、どこの所属? 交番はどこ?」
突然詰問を始めた私に驚いた様子の彼。「そんなこと関係ないだろ」とつっけんどんでしたが、「いいから教えなさい!」と私が声を荒らげると、その剣幕に圧倒されて、しぶしぶ交番名を明かしました。
「ふーん。じゃあ上官はオオタさんね」
タナカは今度こそ仰天。そりゃあ、イチャモンを付けて罰金を強要した初対面の相手が直属の上司の名前を知っていたら驚くでしょう。私はさらに、胸元からある物を取り出して見せてやりました。
たちまちしどろもどろになるタナカ。それは私の警察手帳だったのです。
「私の父も、同じく現役の警察官です」
悪事を働いていた警官は…
「一般市民に言いがかりをつけて恐喝するなど言語道断。この件は父にも報告します」。実は、私の父は警察官の中でも上の階級。真っ青になったタナカから免許証を返してもらい、私は病院に急行しました。もちろん交通ルールは守った上での安全運転です。
父はというと、なんとただのギックリ腰! 痛そうではあるものの、元気な姿に胸をなで下ろしました。
タナカのほうには、父から上官へ厳しい指導が行き、取り調べを実施。数々の恐喝罪が発覚したのです。押収したスマホにあった免許証の写真から女性ドライバーばかりを狙っていたこともわかり、即逮捕となりました。
市民の皆さんの平穏な生活を守るのが、警官である私の仕事。同僚の不祥事は残念ですが、発見できてよかったです。タナカも、改心して社会の役に立つ人になってくれることを願っています。
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「交通違反を見逃してほしいなら50万円払え」と強要してくるなんて、あり得ない警官ですよね。そもそもその交通違反も濡れ衣でしたし、女性ドライバーばかり狙っていたというのも卑劣です。病院へ急行中というタイミングでしたが、悪事を明らかにして懲らしめることができ、一件落着ですね。
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