事故に遭遇してから数日。私は買い物に出かけた先で、高校の同級生・タツオに再会しました。タツオは泣き止まない男の子に大苦戦! 慣れない子守を任されて困っているのかと思い、声をかけました。
どうやらタツオはシングルファーザーとして子育てに奮闘中なのだそう。私で力になれることがあればと思い、その場で連絡先を交換しました。
苦労ばかりの再婚
この再会をきっかけに、私たちは頻繁に会うようになり恋人同士に……。タツオの息子が4歳になったタイミングで再婚し、私はママになりました。
しかし息子は再婚した途端、私を臭い・汚いと避けて、懐きません。「バアさん」と呼ばれるたびに悲しい思いをしていました。
更につらかったのが、再婚した途端にタツオの態度が急に冷たくなったこと。会話はどんどん減り、しまいには挨拶すらも拒否。私を見て舌打ちすることもありました。耐えきれなくなった私は、息子が小学生になった日に離婚を切り出したのです。
するとタツオは「仕事のストレスをぶつけてしまって悪かった」と、土下座して謝ってきました。もう一度チャンスが欲しいと言うので、許したものの、以前のような紳士的でやさしいタツオに戻ることはありません。
それでも2年間育ててきた息子には、情や責任があります。なんとか結婚生活を続け、ついに息子は高校を卒業。就職して1人暮らしを始めました。
私をひと目見て泣き出した!?
息子が家を出て1年後。息子は突然、驚くほどきれいな婚約者を連れて家にやってきました。今働いている会社の社長令嬢とのこと。私も簡単に自己紹介をしたのですが、その瞬間、彼女は突然泣き出して帰ってしまいました。
「彼女に何をした?!」息子は怒って私を怒鳴りつけましたが、もちろん心当たりはありません。「次期社長の座につけたと思ったのに、婚約破棄されたら慰謝料払わせるからな!」そう言って、息子も出て行ってしまったのです。
そのすぐ後、私はタツオから離婚を告げられました。子育てと家事全般を押し付けられる人を探していただけで、愛情はなかったと平然と話します。それを聞いた私は、ショックよりも怒りが大きく、その場で離婚届にサインし、荷物をまとめて家を出ました。
衝撃の再会
家を出たものの、これからどうしたら良いかわかりません。あてもなく歩いていると、高級車が私の横に停まり、窓が開きました。中にいたのは、息子の婚約者。すこし話がしたいと言われたので、車に乗せてもらうことにしました。
そこで、泣きながら返った理由を聞かされた私はビックリ! なんと、10年前に事故にあったところを助けた男の子が、息子の婚約者だというのです。
スポーティーな風貌から、事故にあった子どもは男の子だと思い込んでいましたが、婚約者はかなりのスポーツ少女だったらしく、短髪で筋肉質だったそう。私と再会し、運命に感動して泣いてしまったと話しました。
たった2人の家族なのに…
運命とも言える再会に私も感動していたものの、離婚した以上彼女と親子になることはありません。私は、これまでの顛末を話し、謝りました。
婚約者は驚いて息子に電話をかけ、事実を確認した様子。私をけなす発言を聞いて、婚約破棄を言い渡していました。
逆玉の輿に乗ると疑いもしなかったタツオと息子は、あれこれ散財していた様子。これから支払いに追われることでしょう。その上「婚約破棄されたのは父さんがあの女と離婚したせいだ」「お前の母さんへの態度が悪かったせいだ」と押し付け合い……。たった2人の家族だというのに、いがみあうことになったようです。
私はというと、彼女の計らいで仕事と住む家を手にいれることができました。彼女は私のことを大切にしてくれるので、まるで娘ができたようです。
『情けは人のためならず』と言いますが、こんなふうに自分に返ってくることがあるのですね。