音信不通の父親がいる
後の夫となる彼との交際期間が長くなり、お互いの親に紹介することになった際、彼から「お父さんとはほぼ音信不通の状態」であると聞かされました。彼が8歳のころに両親が離婚し、それから一度も会っていないとのことでした。
そのときは彼のお母さんにだけ挨拶へ行くことになり、彼の父親について私は特に気に留めてはいませんでした。
結婚の報告をしたい
そのあと、私たちの交際は順調に進み、結婚をすることになりました。そこで私はふと彼の父親の存在を思い出したのです。
「結婚することを、お父さんに報告しなくていいの？」と彼に聞くと、彼は「ずっと音信不通なんだからいいよ」と言います。しかし結婚という一大イベント。私としては報告くらいはしておいたほうがいいのでは、という思いがあり、そのことを彼に伝えると「たしかに。せめて結婚報告はしておこう」と彼の母親に連絡先を聞くこととなりました。
彼の母親も、父親とはほとんど連絡をとっていなかったようですがなんとか連絡先を知ることができ、彼から父親に結婚報告のメッセージを送りました。
「実は、お前には…」
メッセージを送ってから数日が経ったある日、彼に父親から返事が届いたよう。しかし、届いたメッセージに「えっ！？」と彼が大声をあげました。「どうしたの？ お義父さん、なんて言ってた？」と聞くと、私以上に驚いた様子の彼が返事を読ませてくれました。
そこには結婚のお祝いとともに「言っていなかったけど、実は私も再婚していて、お前には兄弟がいます」と書いてありました。「ずっとひとりっ子だと思っていたのに、知らないうちに兄弟がいたなんて！」と彼は驚きで気が動転しているようでした。
結婚をきっかけに、夫に兄弟がいることを初めて知った衝撃体験でした。そのあと、彼は少しだけ父とメッセージのやりとりをしていたようでしたが、彼も私も義父、そして彼の兄弟にはいまだに一度も会ってはいません。しかし「いつか会う日がくるかもしれないね」と彼と話すこともあります。なんだか不思議な気持ちがしますが、その日がくるのを楽しみにしている私もいます……。
著者／宮田しほり
イラスト／マメ美
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