会うたびに心無い言葉を浴びせられるので、さすがの私も参ってしまい、義姉夫婦からの連絡を無視することにしました。そんなあるとき、義姉夫婦が私の家にやってきて、とんでもない提案をしてきたのです。
義姉からのプレゼント
「子どもができなくて寂しいあんたたちに、プレゼント!」
誕生日はもちろん、結婚したときさえも何もくれたことのない義姉夫婦からのプレゼントなんて、嫌な予感しかしません。
差し出されたのは不貞腐れた顔の姪。なんと「要らないからしばらく預かって」と言い、私たちの返事も待たず、姪を置いて帰ってしまいました。
高校生になる姪は大人しい性格なのか、これまでもあまり言葉を交わしたことがありませんでした。でも、私にデリカシーのないことを言う両親を制してくれることが多く、嫌な印象はありません。「あの両親に育てられたのによくもまともに育った」と感心していたほどです。
「補導されてばかりで学校にも行かない、こんな問題児は高校受験を控えた弟の邪魔なんだって……」姪は静かに呟きました。
高校生のママに!
あんな両親といえど、こんな仕打ちをされて悲しくないわけがありません。たとえ家に帰したとしても、姪は肩身の狭い思いをするでしょう。私は腹を括りました。
「私の娘として育てるから覚悟して!」そう言って、夫の書斎を片付けて姪の部屋を作りました。姪はなんだか引き気味……。
でも一緒に生活を始めてみると、根は素直な子でお手伝いもしっかりしてくれました。わが家にやってきてからは、学校にもきちんと通うようになり、補導されることもありません。さらに勉強にも打ち込むようになり、なんと学年でも上位の成績を叩き出していました。
娘を捨てた義姉夫婦との再会
ある日、姪は「医者になりたい」という夢を打ち明けてくれました。義姉にも話したことがあるようなのですが「医学部に入れるなんてもったいない」と鼻で笑われて終わったそう。それ以来夢を諦めてしまったと悲しそうに言いました。
「何事も挑戦するべき」そう思った私は、姪の夢を応援することにしました。それから約1年後、姪は現役で医学部に合格! 医者になる夢を叶えました。
それから5年、姪が働く病院に偶然義姉夫婦がやってきたそう。医者になった娘を見て、さぞかし驚いていたようです。しかしそれで終わるわけがありません。その夜、義姉夫婦は姪を押し付けたあの日以来、初めてわが家にやってきました。
家族の形
「医者になったなら言ってよ! 私たちに恩返ししてくれてもいいんじゃない」「うちに帰ってきてもいいんだぞ」インターホン越しに義姉夫婦が話し始めます。
そんな2人の姿を見て「恩返しをする相手くらい、自分でちゃんとわかってるから!」と姪はブチギレ。「二度と娘だと思わないでほしい」ときっぱり言い放ち、義姉夫婦を追い返しました。
その日、姪は初めて「本当の親だと思っている。育ててくれてありがとう」と私たちに言ってくれました。私は思わず号泣。右も左もわからないままスタートした母親生活ですが、こんなに立派な娘に恵まれた私は、世界一の幸せ者かもしれません。
自分の子どもを持つことはできませんでしたが、素敵な親子関係を築けたようです。こんな家族の形も素敵ですね。