私は、夫にこき使われる日々を送っていました。親戚が来ると言って、訪問前夜に料理の支度や部屋、庭の掃除を言いつけ、徹夜してでもしろと命令してくる夫……。
揚げ物をしているときに、やけどをしたので病院に行くと、「大したことがないのに行ったのか」「医療費がもったいない」と言われる始末で、夫からは診察なんかより忘れ物を会社に届けろと言われました。
チャンス到来!
結婚が前の職場を辞める1つの口実にもなり、また養ってもらっている手前、私は抵抗できずにいましたが、徐々に限界を感じていました。
ある日、私は、夫からスーツのクリーニングを頼まれました。大切な取引先と会うのだそうです。
「スーツはクリーニングな」
「忘れずに出せよ!」
でも、その日はいつもとすこし違いました。
朝スーツを投げつけられたとき、私は面白いものを見つけたのです。なぜかポケットに、記入済みの離婚届が……。始めは頭をトンカチで殴られたようなショックがありましたが、その後何かつき物が落ちたような感覚も覚えました。今がチャンスだと、神さまが言っている! 私はすぐに行動しました。
「出しましたよ、離婚届も一緒に」
「は?」
夫の命令は絶対ですから。離婚を願う私宛の手紙も一緒に入っていたため、署名し、役所へ提出してきました。それを聞いた夫は大慌て。私に渡す気はなかったと、訳のわからないことを言い、回収しに行けとまで言われましたが、私たちはもう他人同士。命令される筋合いはありませんでした。
あきれた夫の行動に…
家を出た私は、親戚の農園に雇われ住み込みで働くことに。夫は何度も連絡してきて、復縁を迫りまってきましたが、私はもう以前の生活に戻りたくありませんでした。生活が安定していなくても良い。自由がほしいかったのです。
それに私を引き止めたいのならば、夫にはまず説明しなければならないことがあります。一体あの手紙と離婚届は何だったのか。夫からは「事情を話したら戻るか」と問われましたが、そんなつもりは毛頭ありません。しかし話を聞いてみないことにはわからないので、一応聞いてみることに。すると驚きの事実が判明したのです。
なんと夫は不倫をしていて、相手から結婚を迫られていたとのこと。あまりにしつこいので離婚する予定だとパフォーマンスしたつもりが、うっかりミスで現実のものとなってしまったと……。
不倫相手は会社の後輩だそうで。自分がわざわざ評価を上げてやらないとダメなくらい仕事ができないんだとブツブツ言っていました。挙げ句、不倫相手は自分の再婚相手に値しないと言って、再度私に復縁を迫ってきました。散々馬鹿にされ、傷つけられた上に、不倫していた男と再婚だなんて……。当然、私に再婚の選択肢はありませんでした。
一歩踏み出す勇気を!
元夫はその後不倫相手と無理やり別れたようで、社内に悪いうわさを立てられ、現在は窮地に陥っている様子。その上私から精神的苦痛と不倫に対する慰謝料を請求されることになり、泣き面に蜂状態のようです。
私はやさしい、懐の広い女だったと泣きついてきましたが、それは自分が力で押さえつけ、都合の良い女に仕立て上げていただけのこと。最終的に裁判で離婚と慰謝料を勝ち取った私は、生活を立て直すこともでき、今は新しい人生を楽しんでいます。
会社をやめ、養ってもらっているという負い目があり、夫の言う通りに行動してきた妻。夫が持っていた離婚届を見て、そういう選択肢もあるのだと目が覚めたのかもしれませんね。一歩踏み出す勇気は簡単に持てるものではないかもしれませんが、行動を起こすことの大切さを忘れないでいたいですね。