お子さんを望むご夫婦の中には不妊治療をされている方もいらっしゃると思います。精神的・肉体的な負担とともに金銭的にも負担がかかりますが、国(手続きは都道府県・政令指定都市・中核市の窓口)だけでなく一部の都道府県・市区町村で不妊治療費の助成をしています。
お住まいの場所によっては2カ所から支給される場合もありますので、この助成制度についてかんたんに説明していきます。
1.全国一律に受けられる助成制度とは
厚生労働省は、配偶者間の不妊治療に要する費用の一部を助成する“不妊に悩む方への特定治療支援事業”をおこなっています。この制度は全国一律で、窓口はお住まいの都道府県庁、政令例指定都市・中核市の市役所となります。厚生労働省で医療機関を指定しています。
■厚生労働省:指定医療機関一覧http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000047346.html
平成25年度には約15万件の助成が実行されました。助成の内容は以下のとおりです。
①対象者(夫婦は法律上の夫婦が要件。事実婚の場合は不可)
(1)特定不妊治療以外の治療法によっては妊娠の見込みがないか、または極めて少ないと医師に診断された夫婦
(2)治療期間の初日における妻の年齢が43歳未満である夫婦
(3)夫婦の所得合計が730万円以下
②対象となる治療
体外受精及び顕微授精(以下「特定不妊治療」といいます)
③給付の内容
(1) 特定不妊治療に要した費用に対して、1回の治療につき15万円(凍結胚移植(採卵を伴わないもの)等については7.5万円)まで助成。通算助成回数は、初めて助成を受けた際の治療期間の初日における妻の年齢が40歳未満であるときは6回(40歳以上であるときは通算3回)まで。ただし、平成25年度以前からこの助成を受けている夫婦で、平成27年度までに通算5年間助成を受けている場合には助成しない。
(2)(1)のうち初回の治療に限り30万円まで助成。(凍結胚移植(採卵を伴わないもの)などは除く)
(3)特定不妊治療のうち、精子を精巣または精巣上体から採取するための手術を行った場合は、(1)及び(2)のほか、1回の治療につき15万円まで助成。(凍結杯移植(採卵を伴わないもの)は除く)
2.お住まいの都道府県・市区町村独自の制度・上乗せ制度を実施している場合も
上記の助成制度は全国一律ですが、それとは別に都道府県・市区町村独自の制度や上乗せ制度を実施している場合があります。そのため、お住まいの場所によっては都と区、県と市のように2カ所から不妊治療の助成が受けられる場合があります。
一例を挙げると、大分県や三重県などでは、全国一律の助成では対象とならない男性の一部の不妊治療に助成をおこなっていたり、一部の市区町村では対象となる治療の範囲や金額を上乗せしたりと、独自の制度を設けていることがあります。また、東京都では1回の治療で15万円の対象となる上記③の(1)の助成が20万円または25万円になることがあります。これは全国一律の助成に東京都が上乗せで助成をするためです。
お手間はかかりますが、お住まいの都道府県・市区町村で独自の助成をしている場合は2カ所から助成を受け取れる可能性がありますので、全国一律の制度以外に都道府県・市区町村独自の制度がないか、ホームページや担当部署に確認するようにしましょう。
結果として、1カ所しか助成が受けられないことも、治療内容や所得の基準などで助成がまったく受けられないことも可能性としてはありますが、不妊治療を考えている方は、費用負担を減らすことができる助成が利用できるか調べたうえで検討されるといいでしょう。
1級ファイナンシャルプランニング技能士、CFP。独立系FP事務所・株式会社とし生活設計取締役。教育費・老後資金準備、税や社会保障、住宅ローンや保険の見直し、貯蓄・資産運用等、多角的にライフプランの個別相談を行うとともにセミナー講師として活動しています。