しかし一緒にいる時間はとろけるように過ぎ、私たちの関係は彼の引っ越しによって終わりを迎えました。
初恋
引っ越す前日、彼は小さな箱に入ったおもちゃの指輪を差し出して「君を守れる強い男になって会いにくるから! そのとき結婚してください」と言ってくれました。
しかしSNSもない時代の話。引っ越して以来会うことも連絡をとることもないまま、私は大人になりました。
大人になっても彼が忘れられず、自分でも諦めがわるいと思いながらも、未だに初恋の彼が迎えに来てくれるのを待っていたのです。
思いがけない再会
ある日私は、何気なく眺めていた記事に息をのみました。そこには『天才起業家、ついに顔出し』という見出しとともに、大人になった彼の姿がありました。
記事には、これまでプロフィールを非公開にしていた天才起業家が、ついにその素性を明かしたと書かれていて、そこにいたのは今も変わらないきれいな顔をした彼。
私は仕事のツテを頼りに彼にアポイントを取り、もらった指輪を持って会いに行きました。私があのときの空手少女だということ、指輪も大事に持っていたことを伝えると、彼も喜んでくれ、すぐに私たちは付き合うようになったのです。
初恋の彼と結婚
その後、彼から正式に結婚を申し込まれた私は、彼のご両親に挨拶をしに行くことになりました。幼少期の思い出をご両親にも話し、再会できたなんて夢みたいだと話す私。それを見たご両親の驚いた顔が忘れられません。
結婚を認めてもらったと思っていたその日の夜、彼のご両親が私の家を訪ねてきました。開口一番に「あなた、本当にいいの?」と……。意味がわからずに聞き返すと、とんでもない事実を打ち明けられたのです。
お母様の話によると、私の初恋の相手は今付き合っている彼ではなく、双子の弟なのだそう。一卵性なので見た目はほぼ同じ。友だちもホクロの位置で判断しているくらいソックリなのだそうです。
双子の弟は道路に飛び出した少女を助けた代わりに自分が事故に遭ってしまい、一部の記憶を失って家に引きこもっているとのこと。それをいいことに、双子の兄が弟のフリをしてメディアに出ていたのです。
初恋の彼
「とにかく一度会ってほしい」とお母様から言われ、私は翌日早くに再び彼の実家を訪ねました。双子の弟・私の初恋の人は、私が持っていった指輪の入った小さな箱を見て涙ぐみ、箱から指輪を取り出して指にはめてくれました。
「よかった。また会えた」そう言ってやさしく笑う顔は、間違いなく私が探していた彼でした。
弟の記憶が戻ってほしくなかった双子の兄は、昔の彼を知っている私が邪魔だったよう。弟も私との再会を心待ちにしていたと知っていたため、指輪を持って現れた私が脅威でした。記憶を取り戻しては困ると考え、本当のことを言わなかったようです。
その後、彼は少しずつ記憶を取り戻し、私たちは結婚しました。初恋の人と結婚できてとても幸せです。
まるで漫画のようなシンデレラストーリー。何年もずっと互いを大切に思っていたなんて、素敵な話ですね。