それは、結婚してから迎えた3回目の私の誕生日。特に何のお祝いもされないまま、あと数時間で誕生日も終わってしまうと思っていた矢先、珍しく姉から電話がかかってきました。
突然の別れ
「お母さんがさっき交通事故に遭って亡くなったって警察から連絡があって……」
姉の言葉にただ茫然とする私。しかし、父を早くに亡くしている私たち姉妹は、自分たちがしっかりし、母を送り出さなければなりません。
私は自分を奮い立たせ、震える手で夫に電話をしました。しかし何度かけても繋がらず、メッセージを送っても既読になりません。私はひとりで実家に向かいました。
実家に着いてからは通夜やお葬式の準備が忙しく、時間があっという間に過ぎていきます。その間も夫からの連絡はありません。
誕生日翌日の夜遅く、さすがに心配になった私は再度夫に電話をかけてみました。
母からの忠告
やっと電話に出た夫は気怠そうにしています。「お前、そっちに泊まるの?」とひと言。葬儀が済むまで実家にいると伝えると「ま、頑張れよ」と、まるで他人事のようです。
当然葬儀には参列すると思い、いつ実家に来るか尋ねると、夫は「お前の親なんだから俺が行く必要ないよな?」と、言ったのです。
実の親ではないとはいえ、夫の考えには同意できません。葬儀には出るように伝えますが「今仕事で手が離せないから一旦切るな!」と言って電話を切られてしまいました。
本当なら側で支えてほしいのに……。そんな気持ちがありましたが、母のそばにいようと部屋に戻ると、灯していたロウソクの火が消えました。母が「このままではダメだ」と言っているような気がして、私は急いで家に帰ることにしたのです。
妻が目にしたものとは
自宅に到着したのは深夜。そっと開けた玄関ドアの向こうからは光が漏れていて、楽しそうな男女の声がしています。勢いよくリビングに突撃すると、案の定夫が見知らぬ若い女性とお取込み中。
私が家に帰ってこないとわかった夫は、浮気相手を自宅に連れ込んでいたのです。
悲しさよりも、証拠を押さえなくてはいけないという使命感のほうが大きく、とにかく証拠を押さえた私。十分な証拠を手にし、実家に戻りました。
まったく夫の不貞に気付いていなかった私。きっと母が警鐘を鳴らしてくれたのだと信じています。慰謝料を十分とって離婚し、今は母の分まで幸せに暮らしています。
妻の勘は鋭いと言われていますが、いざ証拠を得るのは簡単ではありません。ショッキングな光景だったと思いますが、スムーズに証拠を押さえ、早いうちにダメ夫と決別できたことは、たしかに亡くなったお母さんのおかげかもしれませんね。