ある朝、いつものように最低限の身なりだけ整え会社に向かっていると、駅である女性に声をかけられました。
ノーメイクは貧乏の証?
「朝帰り?」と私に話し掛ける声の主は、近所の公園でよく顔を合わせるママ友・エリコさん。普通ならバッチリメイクをしているであろう朝に、ほぼノーメイクの私を見てそう思ったのでしょう。
「私はこれから出勤です。時間がなくてメイクは……」そう話していると、エリコさんは私の言葉を遮り「貧乏で化粧品も買えないのね、かわいそうに。愛用の化粧品わけてあげましょうか?」と笑います。「シンママだと、夫からキレイにしてほしいなんて言われることもないし、楽だよね!」とまで言われる始末。
実はエリコさんは、シングルマザーを見下しているのか、会うたびにこんなことを言われてばかり……。底に僅かに残った化粧品を、お下がりだと言って渡してきたこともありました。
なるべく会わないように、エリコさんが公園に来る時間を避けるようにしていたのですが、まさか駅で会うなんて盲点でした。
娘の反撃
残念ながら、どんなに避けても会ってしまうときは会ってしまうようで、娘と2人ピクニックに出かけると、またしてもエリコさんに遭遇。
今度は何を言われるかと身構えていると、「パパがいなくてかわいそうね。欲しいものも満足に買えないでしょ?」と、娘に向かってペラペラと話し始めました。
私は思わず「子どもにそんなこと言うのやめてください!」と叫んでしまいました。エリコさんは、勝ち誇ったような表情を浮かべています。しかし次の瞬間、娘がニコニコしながら言い返してくれました。
「ママだけじゃなくて、おじいちゃんもおばあちゃんもいるし寂しくありません。っていうか、ママのお仕事知らないの? 」
私の正体は…?
言い返されると思っていなかったエリコさんは、少し苛立っている様子。鼻息荒く「どういうこと?」と詮索するので、私はおもむろに名刺を差し出しました。
すると、エリコさんは絶句……。悔しそうに名刺を見つめています。実は私、エリコさんが愛用している化粧品会社の経営者のひとり。お下がりと言って自社製品を渡されたときは驚きました。
化粧をしないのは買えないからでなく、会社で化粧品を試すためにはノーメイクのほうがスムーズなので、あえてそうしているだけです。私は「いつもご愛用ありがとうございます」と伝え、その場を去りました。
ママ友の末路
それからしばらくして、他のママ友からエリコさんが引っ越しをしたと聞きました。どうやら、ご主人の会社が業績不振で家賃が払えなくなったそう。わが社の化粧品は決して安くないので、もう購入いただけることはないでしょう。
今思うとエリコさんは、お金の不安をかき消すかの如く誰かを見下して、心のバランスを取っていたのかもしれません。しかしそれは何の解決にもなりません。
エリコさんには気の毒ですが、今回のことは自分を見つめ直すいい機会。人生をやり直してほしいと願います。
幸せの尺度は人によって違います。シングルマザーだから、貧乏そうだからと、自分の物差しで決めつけるのは、あまりに失礼なことではないでしょうか。
自分が言っていたことがブーメランになって返ってきたエリコさん。反省し、心を入れ替えてほしいですね。
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