傷病休暇を取っていた先輩
私より年上の40代の先輩は、5年前に傷病休暇を取得していました。理由は不明です。「どうしたのだろう」と心配でしたが、当時、新入社員だった私は理由を聞けずにいました。また、なんとなく触れてはいけない雰囲気があったため、社内では噂すら立っていなかったと記憶しています。
ある日、先輩とお昼休憩が同じになり、私は「時々、生理休暇を取得しているんです」と打ち明けました。
生理がうらやましい
なんでも相談できるやさしい先輩。私が「生理が重くて生理休暇を取得することがあって、周りに迷惑をかけるのがつらいです」と話すと、先輩は「あなたがうらやましい」と呟きました。
不思議そうな顔をしている私に、「もう私に生理がくることはないのよ」と言い、先輩は病気の話をしてくれました。そのとき初めて、先輩の5年前の傷病休暇が「子宮体がん」によるものだったと知ったのです。
お母さんになる夢
先輩には子どもがいません。そんな先輩は、子宮体がんを患う前から妊娠を希望し、不妊治療を検討していたそうです。そんなときに謎の下腹部痛で倒れ、緊急搬送される事態に。そして子宮体がんが判明したそうです。
私は祖母を子宮体がんで亡くしており、子宮体がんについての知識はある程度持っています。先輩がどのようにして子宮摘出という判断をするに至ったのか、それが先輩にとってどれほどつらい決断だったのか、容易に想像がつきました。それと同時に、私が相談してしまったばかりにつらいことを思い出させてしまったと、自分の浅はかさに嫌気が差しました。
そんな私を気づかって、先輩は「今ある生理は誰かにとってうらやましいことでもあるんだよ」と話してくれました。
私にとって「つらくて大嫌い」な生理は、誰かにとって「うらやましい」ものであると知った出来事でした。私は祖母を子宮体がんで亡くしていることもあり、定期検診は欠かさず受けていますが、体が健康であることのありがたみを改めて感じました。
著者/水谷ユリ
作画/おみき
監修/助産師 松田玲子
医療短期大学専攻科(助産学専攻)卒業後、大学附属病院NICU・産婦人科病棟勤務。 大学附属病院で助産師をしながら、私立大学大学院医療看護学研究科修士課程修了。その後、私立大学看護学部母性看護学助教を経て、現在ベビーカレンダー、ムーンカレンダーで医療系の記事執筆・監修に携わる。
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