産後1カ月が経ち、両親ときょうだいの力を借りて子育てする毎日は終了。これからは自宅に戻り、夫と力を合わせねばならないのですがーー。
夫はイケメン社長
私と娘の帰宅が楽しみだと言っていたわりに、夫はパーティーや接待ばかりでほとんど家にいません。会社経営に人脈作りが大事だと言いますが、さすがに多すぎてゲンナリしてしまいます。
それでも「ママを助けたい」という夫の気持ちを尊重しようと思い、大目に見ていました。その甲斐あってか、私の育休が明けるころには会社が急成長! 社員も増えたので、少しは家族の時間が取れるはずだと信じていました。
しかし家を開ける頻度は変わらず、度々大きな額のお金をおろすようになりました。とある雑誌で「イケメン社長」として紹介されて以来、夫の知名度も上がり、交友関係も派手になったような気がしています。
夫の隠し事
貯金が減るペースは次第に早くなりました。会社はうまくいっているのか、ギャンブルなどにハマっていないか、心配になってしまいます。
考えても答えは出ません。夫を問い詰めると、表情が一変。深呼吸をしたのち「話さないといけないことがある」と言われました。できればすぐ話してほしかったのですが、仕事の電話がかかってきたため中断……。モヤモヤしながら一晩を過ごし、気付けば夜が明けていました。
翌朝、玄関のチャイムが鳴ったのでモニターを見ると、そこには見知らぬ女性が映っています。誰かと思って玄関を開けると、夫が奥の部屋から出てきて「ごめん! 迷ったんだけど……やっぱり離婚してくれる?」そう言って、記入済みの離婚届を出してきたのです。
突然のことに私が動揺していると、「そういうことなんで!」と女性も笑って言いました。その顔を見て、私はある事実に気がついたのです。
女の正体
とりあえず、私は離婚届けに記入をしながらコッソリ弟に連絡を入れ、ことの顛末を報告。しばらくして、勤務中の弟が慌ててわが家にやってきました。
警察官の制服を着た弟が突然現れたので、女性は顔面蒼白に……。弟が「一緒に来てくれますよね?」と声をかけると、静かに頷いていました。
夫は「どういうことだ!?」と混乱中。私が「この人被害届が出ている結婚詐欺師だよ……。金銭的な援助を要求されなかった?」と聞くと、夫は心当たりがあったようで、「ウソだろ……」とつぶやきながら、呆然としていました。
実は、私も弟と同様に警察官。職業柄、わるいことをした人の顔写真は毎日のように見ています。彼女はここ数週間で何件も相談がきていた人物だったので、よく覚えていました。
結婚詐欺師にしてはツメが甘すぎる彼女……。そんな女に引っかかった夫を残念に思いました。
夫の残念な末路
事実を知った夫は、私に復縁を迫ってきましたが、もちろんお断り。きっちり慰謝料は請求し、離婚が成立しました。私は娘と一緒に実家に戻り、まわりの手を借りながら育児と仕事の両立を頑張っています。
夫はというと、不倫騒動と結婚詐欺に引っかかったことが社員に知られてしまったようで、「そんな人が世のママを助けるような会社を経営するなんて冗談じゃない」と、社員はこぞって退社。結局会社も倒産したようです。志高く、頑張って立ち上げた会社でしたが、もはや自業自得としか言えませんね。
長い時間をかけて得た信頼も、失うのは一瞬です。それを肝に銘じて、誠実に生きていきたいですね。