かさぶたが剥がれた理由
その日幼稚園から帰ってくると、かさぶたになった傷に再び絆創膏が付いていたのです。娘が「血が出ちゃったから」と言うので絆創膏を剥がしてみると、かなり大きくはがれて血が滲んでいました。
そこで私が「気になって剥がしちゃった?」と聞くと、突然みるみるうちに、娘の目には涙が……。私は驚いて理由を聞きましたが、娘はなかなか口を開いてくれませんでした。
時間をかけて話を聞くと、なんと幼稚園でおままごと中にお友だちがかさぶたを剥がしてしまったとのこと。娘はさらに「痛かったけど〇〇ちゃんとおままごとしてただけだから。〇〇ちゃんのママにも先生にも言わないで」と続けました。
娘が話さなかった訳
娘が落ち着いてから、園から帰ってすぐに話さなかった理由を聞くと、「〇〇ちゃんが怒られちゃうと思ったから」と心配そうに答えてくれました。
私は娘のやさしさを大事にしたいと思い、園やお友だちのママには何も言わないでおくことにし、「秘密にしたいことは守るから、痛いことや悲しいことがあったらいつでも話してね」と伝えたのでした。
かさぶたを剥がされたときの痛みを想像すると、親として何も言わずにいるのはつらい気持ちもあります。けれど、痛い思いをしたにもかかわらず、お友だちを心配して何も伝えなかった娘の気持ちを尊重することにしたのです。おままごとでかさぶたを剥がしてしまうなんて大人からすると想像もしない事件でしたが、娘のやさしさを改めて知り、涙した出来事でした。
イラスト/まげよ
著者:河原りさ
2016年生まれと2018年生まれの女の子2人、2024年生まれの男の子のママ。花屋に勤務。都会のおでかけスポットや植物に関心あり。