病院で話しかけてきた高齢女性
受付を済ませると、いつもはソワソワして落ち着かない長男が「今日はちゃんと座ってるよ」と宣言しました。そして長男は椅子に座って、私の隣で名前が呼ばれるのを待つことができたのです。子どもの成長に感動していると、隣から女性の声が「ちゃんと椅子に座って待てるのすごいね」と話しかけてくれたのです。
隣に座っていた80代ぐらいの高齢女性はとてもニコニコしながら、話しかけてくださいました。「ありがとうございます! 」なかなか他人から子どもの行動を褒めてもらう機会もないので、私はとてもうれしくなりました。
ここまでは良かったのですが、次の女性の言葉に私は絶句してしまったのです……。
誰のことを言ってますか?
女性はさらに続けました。「こんな小さいのにとってもえらいお孫さんですね」と。
お孫さん……?誰が誰の孫……?もしかして私の孫……?
なんと女性は、私のことを長男の祖母だと思って話しかけてくれていたのです。
「あ、ありがとうございます。伝えておきますね」と答えてしまった私。咄嗟に「違います。私は母親です」と否定することができず、誰に伝えるかも言わずに曖昧な笑みを浮かべてごまかしました。女性は本当に子どもを褒めてくれているので、怒るというより、そんなに自分が老けて見えたのかとショックが大きかったのです。
チラリと受付を見ると、スタッフの方に気まずそうに目をそらされました。私と女性のやりとりを見られていたのです。顔から火が出そうなまま、会計も済ませて急いで帰宅したのは言うまでもありません。ちなみに帰宅した夫に話すと大爆笑されました。
女性のやさしさあふれた誉め言葉でしたが、全力で喜べない赤っ恥体験になってしまったので、それからは見た目にも気をつかうようになりました。
著者:秋本かなこ
2019年生まれと2021年生まれの兄弟を育児中ママ。元気な兄弟とパワフルな毎日を過ごしている。