2018年1月から証券会社・銀行を中心に“つみたてNISA”が始まります。2017年9月に概要をお伝えしましたが、その時期は金融機関で取り扱う“つみたてNISA”の投資信託の詳細が発表されていませんでした。
10月以降、じょじょに取り扱う投資信託の内容も分かってきましたので、“つみたてNISA”を始めたほうがいいのか迷っている人向けに、この制度のポイントをご説明したいと思います。
つみたてNISAは毎月投資信託を積み立て、収益が非課税となる制度
つみたてNISAは、最長20年間、毎年40万円までの積立投資についての利益を非課税にする制度です。利益は購入した投資信託を売却、または解約して現金化した際に発生しますが、現金化した場合の利益に税金がかからないことが最大のメリットです。通常は利益の20.315%が所得税・住民税となります(例:10万円の利益が出た場合、2万315円が所得税・住民税となります)。
ジュニアNISAでも同様のことは可能ですが、子どもが高校3年生の1月を迎えるまで引き出しができませんので、はじめて積立投資を始める方は、ジュニアNISAよりつみたてNISAのほうが使い勝手がいいように思います。以下、従来のNISAとジュニアNISAとの相違点を表にしております。
※1 実際には、3⽉31⽇時点で18歳である年の1⽉1⽇以降(現役入学の⾼校3年⽣の1⽉以降)に払出制限がなくなります
つみたてNISAの注意点
つみたてNISAは長期での積み立てを前提としているため、NISAよりも運用期間が20年間と長い反面、非課税の年間運用限度枠は3分の1の40万円となっています。また、対象となる運用商品が、NISAは上場株式やほとんどの投資信託が対象であるのに対し、つみたてNISAは国の指定した基準に合致した一部の投資信託のみが対象です。また、1カ月に1回などの定期的な購入が必要となり、まとまった金額での一度の運用はできません。
大手ネット証券(投信取扱の多い4社)の平均では、投資信託は1000銘柄以上から選択できますが、つみたてNISAの対象となる投資信託は、100~130銘柄と限られています。値動きの大きいものや仕組みが複雑なものは除外されているので、選びやすい利点もありますが、自分の運用したい国や投資対象が選べない可能性もあります。なお、つみたてNISAでの運用は、上場株式も対象外ですので、株主優待を非課税で運用したい場合には、NISAまたはジュニアNISAを選ぶことになります。
つみたてNISAに向いているのはこんな人
制度の仕組みと注意点を踏まえると以下に当てはまる人が、つみたてNISAに向いていると思います。
①毎月決まった金額(月3万円以内)で積立運用をしたい人(年間の上限が40万円以内のため)
②運用を初めてする人、大きな値動きを避けたい人(リスクの高い商品を除外しているため)
③ご自身で情報をある程度確認して、10年以上運用する希望のある人(運用期間が最大20年のため)
④積立期間がはっきりしていない人(教育費や老後資金などの目的がはっきりしていなくても解約できるため)
逆に、年間の運用金額が40万円を超える予定のある人、ある程度以上の運用経験があって上場株式やリスクのある商品での運用も検討している人、金融機関の担当者やファイナンシャルプランナーなどに相談しながら運用する人、積立期間がはっきりしている人は、NISAや学資保険、iDeCoなどの別の制度で積み立てをするほうが目的に沿った運用ができる可能性があります。
新年から積み立てを始めようと思った人は、新しい制度だけでなく、既存の方法も合わせてご自身に合った方法を比較検討するようにしましょう。なお、つみたてNISAについて興味のある人はあわせて金融庁のホームページもご確認ください。
※金融庁のホームページ
http://www.fsa.go.jp/policy/nisa2/about/tsumitate/index.html
1級ファイナンシャルプランニング技能士、CFP。独立系FP事務所・株式会社とし生活設計取締役。教育費・老後資金準備、税や社会保障、住宅ローンや保険の見直し、貯蓄・資産運用等、多角的にライフプランの個別相談を行うとともにセミナー講師として活動しています。