由緒正しき夫の実家
険悪な雰囲気が漂う婚約挨拶の席でしたが、夫と義父が「そんな時代ではない」と義母を遮ってくれ、なんとか和やかに終えることができました。義母は曲者でしたが、頼りになる義父がいれば大丈夫!結婚後も何かあれば義父に相談すればいいと思っていました。
そんな矢先、義父が交通事故に巻き込まれ帰らぬ人に……。
葬儀に駆けつけた私に、義母は「なんて格好しているの!?」と門前払い。着物で来るのが常識だろうとまくしたてましたが、その場は夫が制してくれ、なんとか義父にお別れを 言うことができました。
由緒ある家なのにこんな嫁で恥ずかしいと愚痴を言う義母からは、義父を偲ぶ気持ちは微塵も感じられません。葬儀の席だというのに、いかにこの家が由緒正しい名家かをくどくど話してまわるので、親族も「また金持ち自慢……」とうんざりしていました。
披露宴で起きた大事件
葬儀を終えてすぐ、私は高校を卒業。それとほぼ同時に妊娠がわかりました。 亡き義父が、私たちに新しい命を授けてくれたのかも……と喜んでいると、義母は「18歳でデキ婚なんて一族の恥! おろしなさい!」と、とんでもないことを言いました。
夫は、おろすことは考えていないとキッパリ言い放ち、激しい言い合いの末義母も渋々納得。私たちは予定どおり結婚式の準備を始め、すこしおなかが大きくなってきたころに結婚式を挙げることになりました。
しかし、披露宴で事件が起こります。友人たちの余興が大ウケし、会場が和やかな雰囲気になっている中、急に着物姿の義母がメインテーブルへ……。
「膨れた腹で式なんてみっともない! 私に恥をかかせないで」「それなりの血筋の人じゃないと認めない」と騒ぎ、義母は手に持っていたグラスのビールを、私に無理やり飲ませようとしました。夫が止めに入ってくれたので、ビールを口にすることはありませんでしたが、義母は興奮状態で暴言を吐き続け、会場のスタッフに連れられて退場することに……。
ゲストも義母にドン引きです。私も夫もさすがに許せず、それ以来、義母と会うことはありませんでした。夫は私に「いつか必ず義母に自分のおこないを反省させるから」と約束してくれたのですが、あの義母が反省などするでしょうか?
その答えがわかったのは、それから4年の月日が経ったころでした。
ついに夫が動いた!?
4年後、娘が生まれて3人家族になったわが家に、夫の海外転勤の話が舞い込みました。家族で引っ越しの準備を進めていたある日、夫から「そろそろ母さんから電話がかかってくるから」と言われたのです。
久々に聞いた義母の名前。詳しく話を聞くと、義父が亡くなったときに義実家を相続していたそうで、その家を売りに出したと言います。しかし義実家には義母が住んでいたはず……。義母には不動産屋さんを通して、家を出るよう伝えたのだそうです。
結婚式の一件以来、親戚から総スカンを食らっている義母は、突然住む家を失くしたら行くところがありません。きっとわが家を頼ってくるだろうと夫は考えているようで、これが以前私に約束してくれた「自分のおこないを反省させる」ことなのだと言いました。
家柄を大切にした義母が迎えた末路
夫の見立てどおり、3日ほどして義母から「家を出ていけってどういうことだ!」と電話が……。「売却したので……」というと怒りをあらわにしました。
義母は、勝手なまねをするなと電話口で大騒ぎしていましたが、すでに義実家の名義は夫になっているので、文句を言われる筋合いはありません。荷物をまとめ次第わが家に住むと義母はまくしたてましたが、明日には赴任先に引っ越しをする私たち。家に来てもらっても鍵は閉まっているし、待っても誰も帰ってきません。
その後、義母がどうなったのかはわかりませんが、聞くところによるとお金が尽きるギリギリまでホテル暮らしをしていたよう。貯金の底が見えたころに、親戚を頼って電話をかけていたそうです。
しかし親族親族イチ嫌われ者の義母を受け入れる人などいないはず。ここにきてやっと、自分のおこないを後悔していることでしょう。
人間は1人では生きていけません。家柄よりも人柄……。人の気持ちを考え、思いやりを持って人に接することが大切ではないでしょうか。