娘に向かって「刺すぞ!」
娘が3歳、息子が生後10カ月のころの話です。公園で遊んでいると3歳くらいの男の子がやって来て、息子が遊んでいたおもちゃを突然奪いました。真っ先に声を上げたのは娘で、「それは○○くん(息子)の!」と怒り心頭の様子。すると男の子はなんと、「刺すぞ!」と娘に言い放ったのです。娘は引きつった顔。恐る恐る私が「この子のおもちゃだから返してくれる?」とやさしく伝えると、返してもらえました。そこに男の子の母親が登場。状況は見ていたはずですが、笑顔で「すみませ〜ん」と言って、さっさとその場から去ってしまいました。追いかけてひと言おうかと迷いましたが、娘が不安そうな顔だったためそのまま帰宅。その後も数日間、娘は「刺すぞ」と言われたショックを引きずっているようで、「怖い」「悲しい……」とずっと言っていました。娘には「もうあの出来事は忘れよう」と伝えたのですが……。
数週間後に迎えた新年度。なんと娘が通う保育園の同じクラスに、あの男の子がいたのです! 送迎時に男の子のお母さんに思い切って「数週間前にお子さんに『刺すぞ』と言われたことがショックだったようで、ずっと怖いと言っているんです」と伝えたのですが、お母さんはキョトン顔。出来事をもう少し詳しく話すと、「ええ〜! そんなことありましたっけ? 記憶力いいんですね!」と大笑いされてしまいます。娘が数週間引きずっている出来事を、相手がすっかり忘れていることにイラッとしましたが、それ以上言っても仕方がないのでその場は適当に話を合わせて帰ることに。
いつまで引きずってほしくないので、娘へは「あのときは男の子も嫌なことがあって機嫌が悪かったのかも。保育園では仲良くできるといいね。でも何か嫌なことがあったらすぐに先生やママに言ってね」と伝え、さらに「乱暴な言葉は使わない」「人の使っているものは取らない」と教えました。その男の子は保育園では乱暴な言葉遣いをしていなかったようで、数カ月後に娘も忘れることが出来たようです。
いくら傷ついた気持ちを伝えても、相手が出来事を覚えていなければ意味がありません。娘の気持ちのケアは大切ですが、やはり公園で暴言を吐かれたその場で、お母さんに声をかけるべきだったと反省した出来事です。
作画/ Pappayappa
著者:大谷りほ
4歳の娘と1歳の息子を育てるアラサーママ。共働きで転勤族。夫はいつも繁忙期のように帰宅が遅いため、平日はほぼワンオペ状態で仕事と育児に奔走している。家の中のBGMは、娘のおしゃべりと歌声。