「ここは勝ち組しか住めないところなのよ?」「社長息子に捨てられたお姉ちゃんみたいな一般人が入ってきていい場所じゃないんだよ」と妹。
それを言うなら、実の姉から婚約者を奪うような非常識な妹も入ってきていい場所ではない気がするのですが……。
駆け落ちした妹夫婦
私と元婚約者の両親の関係はとても良好でした。元婚約者はもともとまじめな人でした。しかし、妹にそそのかされた元婚約者は、「夜通しクラブで遊んでやる」「金髪に染めてやる」「そして自由になるんだー!」と言って、妹との結婚を強行。会社の後継者からは外れ、実家からも縁を切られてしまったのです。
「社長息子じゃなくても、彼には超天才的な経営の才能があるのよ!今じゃ立派な会社経営者なんだから!」「ほぼ駆け落ちで結婚した後に、彼ったら私を幸せにしたいって言って会社を立ち上げてくれたの♡」「それがめちゃくちゃ大成功して、私たちはこのタワマンに引っ越してきたってわけ!」
妹の自慢話は止まりません。そして、妹は私を下げることも忘れていませんでした。
「妹に婚約者を奪われた負け組がタワマンに何の用?」
「貧乏人のお姉ちゃんなんか逆立ちしても住めないよw」
「ここ私の夫のマンションよ」
「え?」
このタワマンのエレベーターは3つ。低層階専用、高層階までのもの、そして最上階のオーナー専用のエレベーターがあるのです。
さんざん私をこき下ろした妹の目の前で、私はオーナー専用のカードキーを取り出し、最上階直通のエレベーターに乗り込みました。妹はひどく驚いた顔をしていました。
姉の結婚相手
妹に婚約者を奪われた私は、イチから婚活を始めました。知り合いの紹介で出会ったのが、今の夫です。実業家として成功している夫は、威張らず謙虚で、とても素敵な人なのです。
そのことを人伝で聞いたのか、妹は「お姉ちゃんが私よりも贅沢な暮らしをするなんて絶対に許せない……」「あんたの旦那なんて所詮たいしたことないわ!元社長息子の彼の方が経営の才能だってあるんだから!」「部屋だけじゃなくてマンションごと買ってやる!そして調子に乗ってるあんたをこのタワマンから追い出してやる!」と宣戦布告してきたのです。
一見うまくいっているような妹の夫の会社ですが、その売上にはウラがあるのです。妹の罵詈雑言を聞き流しながら、私はとある人たちにメッセージを送ることにしました。
さよならタワマン暮らし
私がメッセージを送ったのは、今でもやり取りを続けている妹の夫のご両親。ご両親は息子に勘当を言い渡したものの、息子かわいさにこっそり裏で手を回して、妹の夫の会社をサポートしていたのです。現に、妹の夫の会社の取引先は、すべてご両親の会社の関係先でした。
「お2人のサポートにも気付かず、息子さんはうちのタワマンの部屋を購入されていますよ」「甘やかすのもほどほどにしてくださいね」とメッセージを送ったところ、ご両親もついに完全に絶縁する決断をしたようです。
そして、あっという間に妹の夫の会社は経営破綻。1カ月も経たないうちに、妹夫婦はタワマンから退去していきました。妹の夫は心を入れ替え、黒髪に戻して夜遊びもせず、会社員としてイチからがんばっているそうですが、妹はやはり変われなかったようです。ときどきうちのタワマンの下に来て、恨めしそうに見上げている妹の姿を見かけました。
そのことを知ったうちの夫は、タワマンのセキュリティを一段と強化。奢らず、実直な性格の夫を見習って、私も誠実に生きていきたいと思います。